クマは右手でハチミツをなめ、左手で敵と戦う…「クマの利き手は左」説は本当か…被害者の証言と傷跡から検証する
深刻な後遺症
土田医師も「うつぶせになって顔や頭を守る。これが妥当だと思います」と同じ意見だ。 「クマによる被害が報じられる際、『命に別条はない』と伝えられることもありますが、顔の外傷の場合、形成外科や整形外科で皮膚移植など再度美容的な手術をするケースもあり、美容的な観点で、その後の生活に影響を及ぼすことも多い。 様々な後遺症もあります。約16%の患者に失明などの重大な後遺症が残りました。この他、ものがうまく食べることができない、涙が止まらない、顔がうまく動かない、といった後遺症もみられました。 感染症の問題もあります。クマの爪は鋭く、深いところまでえぐられてしまうことが多い。そのため傷口に細菌が残り、約20%の患者が創感染症になっていました。抗菌薬で治療しますが、長期の入院になるケースも多く、完治するまでに2ヵ月近く入院した方もいました。 もちろん遭遇しないようにすることが一番ですが、もしクマと出会ってしまったら必ず顔と頭を守ってください」
被害の75%が市街地
ここ数年、北海道や東北ではクマによる被害が相次いでいるが、都市部でもクマの脅威は着実に迫っている。都環境局のまとめによると、都内における今年度のクマ関連の情報は11月11日時点で計271件。今年だけで16頭が捕獲されている(11月11日時点)。 市街地への出没も相次ぎ、八王子市では昨年12月、市役所近くでもクマらしき動物が目撃され、八王子市と隣接する町田市でも昨年10月、青少年施設の敷地内でクマ1頭が目撃された。土田医師はこう訴える。 「クマによる外傷は山の中で起きるものだと考えておりましたが、データを見る限り、被害の75%が人間の生息地で発生していました。普通に民家があり、人が散歩しているような、人間の生活圏で発生していたのです。クマの生息地が拡大していると指摘されていますが、それを実感しました。 クマとの遭遇を警戒するのは難しいですが、クマが出るかもしれないという認識を持つことは大切です。また仮に襲われてしまったら、どんなに小さい傷でもすぐに病院で治療を受けてください」 一般的にクマは11月下旬から12月上旬に冬眠に入るとされているが、冬眠しないクマの存在も指摘されている。クマからの正しい防御手段を知ることは重要だ。 ……・・ 【さらに読む】「ヒグマとツキノワグマの悪魔合体が起きている」…!いま秋田の猟師たちが恐れる「最凶のハイブリッド熊」の正体
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