Mrs. GREEN APPLE炎上の理由は考察ブームの読み違え? 「クリエイターが一番偉い風潮」も背景か
新しさと悪趣味のギリギリを狙う難しさ 「分かる人には分かる」アイデアに引っ張られすぎた失敗
「分かる人には分かる」モチーフと演出。SNSでの考察を加速させてやろうというクリエイター側の野心が、そしてそれをうまく止められない業界事情が、かえって逆効果を生み出してしまったように見える、「コロンブス」炎上事件。ただこの件に関して担当代理店側は一切の謝罪や弁明を出していない(6/21現在)、それは社内でやるべきことはやっていたから、という態度表明でもあるのだろう。 世の中がまだ見たことがないものと、やってはいけないことは隣り合わせにあることが多い。でも今回は、有名代理店の知見や荒業をもってしても、そのわずかな隙間をくぐり抜けることができなかった。それは物議を醸す可能性を徹底的につぶすことより、アイデアを披露したいという自己顕示欲を優先したからなのだろう。コロンブスが新大陸の発見という名誉のために、侵略と虐殺を押し進めたように。 ただ、いつまでも責めていては始まらない。不用意なところがあったのは確かだが、それでも、まだ見ぬ面白いものを作りたいという気概は、ミセスもクリエイターたちも失わずにいてほしいと思う。創造の大海原に打って出るチャレンジ精神で、新たな地平を今度こそ見せてほしいものだ。 冨士海ネコ(ライター) デイリー新潮編集部
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