「自分達が世界を変えられると思うほどクレイジーなやつらだ!」日本メーカー共同チーム、水素エンジンバギーでダカール開発クラスを完走
サウジアラビアで開催されたダカールラリー2024の“Mission 1000”に水素エンジンバギーで参戦した技術研究組合水素小型モビリティ・エンジン研究組合(HySE)は、カテゴリー4位で全行程を終えた。 【動画】Dakar 2024: Stage 12 ハイライト カワサキモータース/川崎重工業、スズキ、本田技研工業、ヤマハ発動機、トヨタ自動車が協力して結成されたHySE。彼らが挑戦したMission 1000は、水素エンジンや電動及びバイオフューエルとのハイブリッドなど、カーボンニュートラル実現に向けた次世代パワートレインの技術開発を行なう開発カテゴリーだ。 ステージタイムを競う通常カテゴリーとは異なり、Mission 1000ではステージごとの完走率で付与されるポイントと、ステージ基準タイムとの差に応じて付与されるボーナスポイントで競う。2024年はこのカテゴリーに10台が参戦した。 HySEは、このクラスに水素燃料エンジンバギーHySE-X1を投入。オーバードライブ・レーシング社製のT3シャシーをベースに、HySEが研究活動に用いる、カワサキのモーターサイクル用998cc水冷4ストローク直列4気筒スーパーチャージド水素燃料エンジンを搭載した。 車両重量は約1500kgで、水素燃料タンクや燃料供給系統の配置のためレイアウトも変更され、給水素やメンテンナンスなど現地での運営にはオーバードライブが協力した。 ただ、ダカール挑戦への道のりは平坦ではなく、2023年11月に行なわれたシェイクダウンでは、たった300mでマシンのシステムがストップしてしまうほどの信頼性だった。しかし12月には新しいパーツを投入し、サウジアラビアで行なわれた直前テストでようやく、十分に走れるだけの信頼性を確保できたという。 そんなHySE-X1のステアリングを握ったのはアメリカ出身のジェイミー・キャンベル。ドライバーだけでなくシャシーデザインなどの分野でも長いキャリアを持つキャンベルだが、彼にとっても今回が初めてのダカール挑戦となった。ナビゲーターはブルーノ・ジャコミが務めた。 キャンベルたちはステージ1から順調に走行したものの、シュバイタの砂丘を舞台に行なわれたステージ6では魔の手が襲った。 このステージでキャンベルたちは、柔らかい砂に足を取られ、2度にわたってマシンがスタック。燃料消費が激しかったことからカットを開始したものの、そこで駆動系の問題が発生しストップを強いられた。マシンの回収には時間を要したものの、休息日などを挟んでラリーを再開することができた。 ステージ6では、Mission 1000に参戦する10台中8台が途中ストップとなっており、同カテゴリーにとっての難所となった。 その後HySEは、ステージ8とステージ11、ステージ12でボーナスポイントを獲得する好走を見せてダカールを走破。120ポイント獲得でカテゴリー4位となった。 研究開発が進められている水素エンジンでダカールに挑んだHySEに対しては、主催者側から“いい意味で”クレイジーだとの評価が贈られたという。 “普通のクルマ好きのおじさん”ことトヨタの豊田章男会長/モリゾウは、今回のチャレンジについて次のように語った。 「“People who are crazy enough to think that they can change the world”(自分達で世界を変えられると思うほどクレイジーなやつら)という褒め言葉が主催者から皆さんに贈られたと聞きました」 「水素エンジンに挑むのはクレイジーだと私自身も思っています。でも最高に楽しくて、最高にエキサイティングです。だからこそモリゾウたちが続けている挑戦も今年で4年目を迎えます」 「皆さん、クレイジーな挑戦を本当にありがとうございました。これからも一緒に未来をつくりましょう!」
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