「宿泊税」導入検討…「客離れにならないか」「ビジネス客が7割以上」など懸念も
広島県が宿泊税導入に向けて検討を加速させている。観光地の環境整備などが進むと期待がかかる一方、宿泊客から一律に徴収する内容に「客離れにつながらないか」「どう活用するのか」と疑問視する声もある。導入を目指す県には、観光・ビジネスなど多様な宿泊客が訪れる実情を踏まえた丁寧な制度設計と、県観光の将来像の説明が求められている。
■観光魅力向上へ
県は5月、県内の宿泊客から1人1泊200円を一律で徴収する素案を発表した。対象は観光、ビジネスなど目的を問わず、旅館、民泊を含む全宿泊客。修学旅行の児童・生徒らの扱いは検討中だ。 県内の観光消費額は2022年に3822億円だったが、県は30年までに8000億円達成を目標に掲げる。湯崎英彦知事は「より多くの人に広島に来て滞在してもらって観光消費額を増やすため、質の高い観光体験を提供する必要がある」と導入の狙いを説明する。 県は、観光対策に年間30億円が必要と試算。素案では、年間宿泊客数を1500万人と見込んで税額を1泊200円とした。観光庁によると、県内の23年の宿泊客数は約1100万人だったが、県はインバウンド(訪日外国人客)の回復具合から条件を達成できると判断している。
■「宮島訪問税」を導入
廿日市市は昨年10月、宮島を訪れる観光客らから1人100円を徴収する「宮島訪問税」を導入し、税収をごみ対策などに充てる。松本太郎市長は6月4日の定例記者会見で「訪問税で、観光地の景観の改善につながる無電柱化も進められる」と説明。県の宿泊税についても「新たな税収は市にとってもプラスになる」と期待する。 一方、5月17日の県議会警察・商工労働委員会では、素案に対し、修学旅行生の扱いや市町への税収の配分などをただす委員が目立った。同23日には、県と23市町の担当者の意見交換会がオンラインであり、導入時期や宿泊事業者の事務負担について質問が相次いだ。県議からは反対をにおわす意見もあり、導入への不安は隠せない。 広島市の松井一実市長は素案公表前の4月に「負担増を強いるのが時宜を得ているかを考えないといけない」と牽制。福山市の枝広直幹市長も6月3日の定例記者会見で「ビジネス客が7割以上を占める市内の状況を踏まえた制度設計をしてほしいと伝えた」と述べた。