“世界最先端の高級時計フロア”が新宿伊勢丹に誕生 「ロレックス」退店を契機に
時計ブランドと百貨店の通常の力関係では、売上高の多いブランドの条件や希望は基本そのまま受け入れるしかない。条件が折り合わずに退店してしまうのは、大きな痛手だ。
しかし同店の時計売り場は01年以降、右肩上がりで上昇を続けている。圧倒的な販売実績を背景に同店は、時計ブランドにリニューアル案の趣旨を時間をかけて説明し、理解と了承を得た。
「今回のリニューアルは、他の百貨店さんでは絶対に不可能なこと。昨年春のスイス・ジュネーブの時計フェア『ウオッチズ・アンド・ワンダーズ』で各ブランドに説明して了承していただいた。そのときヨーロッパのさまざまな時計店を見て回ったがが、私たちのようなコンセプトの時計売り場はどこにもなく、『これは世界初になる、世界最先端になる』と確信した」と上野バイヤーは語る。
こうしてリニューアルした本館5階の時計売り場は、面積は約2倍、取り扱いブランドも約70に拡張した。そしてフロアを①伝統的で正統派の時計を求める顧客を対象にした「ファインウオッチメイカーズ」エリアと、②革新的な時計を求める顧客を対象にした「クリエイティブウオッチメイカーズ」エリアのふたつに分けるとともに、5階を訪れて最初にアクセスするエスカレーター横のエリアには、その中間の、日本製の時計を求めるインバウンド顧客を想定した③ジャパンゾーンを設けた。
「日本の百貨店として日本の時計をおすすめし、その独自の魅力を特に外国の方々にアピールする。これは今回のリニューアルで、真っ先に実現したかったことのひとつだった」という。
「セイコー(SEIKO)」とカシオの「G-ショック(G-SHOCK)」をメインにしたこのゾーンには、量販店取り扱いのモデルはなく、オンラインストアの予約販売でのみ購入できるような特別なモデルを厳選。しかもその場で即購入できる。また、いま愛好家の間で注目される「マイクロメゾン」と呼ばれる少量生産の注目ブランドの商品をていねいな解説付きで販売するのも、百貨店の時計売り場としては画期的な試みだ。
上野バイヤーが語るように、これは新旧あらゆる顧客をひきつけ、世界をリードする画期的なリニューアル。百貨店の時計売り場では、同じく三越伊勢丹グループの三越日本橋本店が長らく一番店だが、伊勢丹新宿本店の伸び代は大きい。高級時計ビジネスにおける伊勢丹新宿本店の「独走」はさらに続く。