“家族の絆”や“人間ドラマ”が泣ける…山下智久海外ドラマ初主演作「神の雫/Drops of God」を振り返る
山下智久海外ドラマ初主演作となるHuluオリジナルの国際連続ドラマ「神の雫/Drops of God」。“ワインに運命を翻弄される2人の男女”を軸に、壮大な遺産バトルが繰り広げられるヒューマンドラマだ。見応えのある“ワイン対決”はもちろん、それぞれの家庭環境なども丁寧に描かれているため、本記事では「家族の絆」や「人間ドラマ」に注目しながら全話のあらすじを振り返る。(一部作品のネタバレを含みます) 【写真】対照的な戦い方をする山下智久“一青”とフルール・ジェフリエ“カミーユ” ■テストを行う中で人間ドラマが複雑に絡み合っていく 物語は、世界的なワインの権威として知られていたアレクサンドル・レジェ(スタンレー・ヴェベール)が亡くなるところから始まる。残されたのは総額160億円もの莫大な遺産。アレクサンドルは実の娘であるカミーユ(フルール・ジェフリエ)と、彼の弟子である遠峰一青(山下智久)を指名し、遺産相続をかけた対決をするように促す。 幼い頃からワインの英才教育を受け、あるトラウマでアルコールが一切受け付けられなくなったカミーユはアレクサンドルと疎遠状態だったが、母親のマリアンヌ(セシール・ボワ)の反対を押し切ってテストが開催される東京へと向かった。 一方、一青は大企業「遠峰ダイヤモンド」の御曹司で、会社の後を継がずワインに夢中な一青のことを母親の仄香(渡辺真起子)は良く思っていなかった。父親の博和(二階堂智)だけは一青の良き理解者だったものの、仄香には逆らうことができず、影ながら応援するのみだった――。 肝心の遺産相続のテストは3つ用意されており、“第1のテスト”は課題のワインを試飲して品種や産地などを当てるというもの。カミーユはワインを口にするとすぐに気分が悪くなってしまうことからテストは難航したが、幼い頃の父親との記憶を辿りながらどうにか試行錯誤を重ねていく。 すると過去の記憶から、トラウマだと思われていたカミーユのアルコール嫌いは、実は幼少期にカミーユがワインを一気飲みしたことから引き起こされていたものだと判明する。トラウマを“アレクサンドルの行き過ぎた教育のせい”だと思い込んでいたカミーユは、父親に対する気持ちが少しずつ変化していくのだった――。 その後もアレクサンドルのテストが進む中で、カミーユや一青の“家庭環境”が浮き彫りとなり、家族への思いや関係性も色濃く描かれる本作。単なる“遺産相続をかけた戦い”ではなく、さまざまな人間ドラマが複雑に絡み合っている点が、本作の見どころの1つと言えるだろう。 ■一青とカミーユの対照的な戦い方に注目 本作で注目すべきは、一青とカミーユ、それぞれの戦い方の違いだ。カミーユは対決を機に来日し、その際に父親のアレクサンドルの旧友でレストランオーナーをしているルカ(ディエゴ・リボン)の助けを借りことになる。 またルカの部下であるロレンツォやみやびもカミーユに協力的で、目的のワインを探すための助言をしたり、落ち込んでる時に励ましてくれたりと、精神的な支えになっている。 さらにカミーユがフランスに帰った際は、幼少期に家族ぐるみで付き合いがあったフィリップ(ギュスタヴ・ケルヴェン)親子の存在も大きかった。特にフィリップの息子・トマ(トム・ウォズニチカ)は協力者でありながらも、次第にお互い惹かれ合っていく様子が描かれている。 このように、カミーユは多くの人の力を借りながらアルコールのトラウマを乗り越え、チームで前向きにテストへ挑んでいったのだ。 しかし対する一青は、前述の通り家庭では孤独で、遠峰ダイヤモンドの会長である祖父の昇にも「負けたらすべてを失う」とプレッシャーをかけられる始末…。そして仄香も、全く一青に笑顔を見せず常に高圧的で、博和もそんな仄香の顔色を伺ってばかりで反発することもあまりなかった。 そのため一青は、テストの課題以上に、いつも家庭との問題に向き合っており、孤独にさいなまれながら奮闘する姿が描かれている。その様子はカミーユの前向きな姿とはあまりにも対照的で、ネットでも状況的に不利だと思われる一青に対し「一青があまりにも可哀想」「一青を応援したくなる」と不憫に思うコメントが多数寄せられている。 ■深い愛情が伝わってくる一青と父・博和の絆 本作で印象に残るシーンと言えば、やはり一青と両親の確執だろう。ある時、仄香は“私の言うことは聞かないから”という理由で、博和に「一青に対決を辞退するように伝えて」と命令する。もともと博和は一青の“ワインに対する熱い気持ち”を知っていたものの、結局命令された通り伝えてしまい、一青は博和に落胆するのだった。 結局博和の言葉は“本心ではない”ということに気づいた一青は、ワインのテストを続行することに。そんな中、仄香から「役立たず」と責め立てられ、一青からも見限られた博和。ふがいない自分に嫌気が差したのか、貴重品や結婚指輪などを置いて失踪してしまう。 その後一青は記者の片瀬百合香(岡本あずさ)の力を借りながら父親探しに奔走。仄香に逆らうことができない博和に一度は幻滅したものの、失踪した博和を気にかける一青の様子からは“父親への愛情”が伝わってくる。 そして一青と博和は、物語の終盤で感動的な再会を果たす。一青が博和を大切に思う気持ちは、遺産相続対決のラストで“ある決断”を下すきっかけにもなっているため、非常に大事な描写と言えるだろう。また、始めはただの対戦相手だったカミーユと一青の関係も、後半にかけて一転する。それぞれの思いが“絆”となって打ち解け合う瞬間は、見ていて思わず胸が熱くなる。 ちなみに本作では、カミーユと一青が生まれる前のエピソードも描かれており、そこで物語にかかわる重大な秘密が明かされる。衝撃的な事実を知った一青とカミーユが全てを受け入れ、改めて家族と向き合うシーンは必見だ。 本作は、ワインに関する知識やハラハラドキドキする対決の行方はもちろん、家族に関する描写も繊細かつ丁寧に描かれている。そのため一青とカミーユ2人の内面やバックグラウンドも理解できるように仕上がっており、なにより“家族”との愛や絆を大事にしたくなるようなシーンが詰まっていた。