「歴代首相に盆暮れに1000万円ずつ献金」「地域振興で潤うのは一世代だけ」原発にまつわる話
原発交付金は市民のためになってきたのか
もちろんこれは中央だけの話ではなく、地方では推進派の政治家らのもと、再稼働が進んでいる。その一例として、ここでは同書から、東日本大震災で津波と地震の被害を受けた宮城県の女川原発についての事例を紹介したい。 ~~~ 地元紙「河北新報」の2020年3月の世論調査では、再稼働に「反対」「どちらかといえば反対」は計61.5%だったが、原発が建つ立地自治体の女川町議会、石巻市議会ともに再稼働を求める陳情を保守系議員らの賛成多数で採択した。同年9月24日の石巻市議会では木村忠良議員が、「原発に関する交付金が市民の福祉向上に寄与してきた」と賛成の立場から述べている(同年9月25日付「読売新聞」より)。(112ページより) ~~~ その結果、宮城県議会も再稼働に賛成する請願を自民党系会派などの賛成多数で採択したという。 「原発に関する交付金が市民の福祉向上に寄与してきた」との主張には、地元を納得させるだけの説得力があるだろう。事実、役場や学校、運動場が造られたりもしたようだ。とはいえ、ここには大きな問題が絡んでくる。 新たな施設ができるのはいいとしても、立地自治体はそれらの維持費が捻出できずに苦しむことになるというのだ。そのことについては、元福島県知事の佐藤栄佐久氏の言葉が分かりやすいだろう。 ~~~ 「原発の地域振興で潤うのはたった一世代だけ。40年たてば固定資産税もなくなって、その自治体の財政状況は悪化の一途をたどり、最後は町長の給料すら払えなくなって、大量の使用済み核燃料だけが残る」(「アエラ」2013年2月4日号より)(113ページより) ~~~ 福島県大熊町と双葉町にまたがった福島第一原発もそうだったようだ。双葉町は電源三法による交付金の交付が終わったことなどから財政が悪化しているというのだ。 もちろんこれは、原発にまつわる話のごく一部に過ぎない。しかしそれでも、原発(と原発にまつわるさまざまな事例)がいかに不安定なものであるかが分かるのではないだろうか。 印南敦史(作家、書評家)