黒羽藩主増業公記録の技法再現 栃木・大田原 「大関組紐」商品化へ前進 試作品を奉納
黒羽藩11代藩主大関増業(おおぜきますなり)(1782~1845年)がまとめた兵学書を中心とする百科全書「止戈枢要(しかすうよう)」で紹介されている組みひもを、「大関組紐(くみひも)」として現代に復活させるプロジェクトが商品化に向けて前進している。栃木県大田原市と大田原市観光協会を中心に、使用する色など地域ブランドとしての仕様がほぼ決定。3月には大関家の菩提(ぼだい)寺である黒羽田町の大雄寺(だいおうじ)で、増業公180回遠忌に合わせた試作品の奉納式が行われ、関係者がプロジェクトの成功を祈願した。 組みひもは古くから、甲冑(かっちゅう)の材料となる短冊状の板「小札(こざね)」を上下につなげる「威糸(おどしいと)」などとして、武具に多用されていた。止戈枢要の「組紃備考(そしゅんびこう)」の巻には、組みひもの材料や道具、製作技法などが詳述されている。 プロジェクトは、兵学や文芸、産業など多数の分野に精通し「文化人大名」と呼ばれた増業公の功績を広めつつ新たな地域資源を創出することが目的で、昨年5月の講習会をきっかけにスタート。全国にある他の組みひもとの差別化を図るため、大関組紐のコンセプトや仕様を検討してきた。 関係者が組紃備考に記されている組みひもの中で着目したのは、大関家伝来の甲冑に用いられている「四色矢羽根文様(よんしょくやばねもんよう)」。「紺」「萌木」「白」「紫」の4色を「大関四色」と名付け、大関組紐の仕様を固めた。 3月の奉納式には約30人が出席。相馬憲一(そうまけんいち)市長が「時代を超えて継承されて、市の歴史的な資源として地域活性化の一助となることを期待する」とあいさつした後、試作品として制作された8種類の大関組紐が奉納された。 今後は講習会などを通して制作者を養成する体制を整備するほか、インバウンド(訪日客)需要に照準を合わせ、座禅と組みひも制作を組み合わせるなどした「体験型観光」の充実にも力を入れていく方針だ。 プロジェクトの中心メンバーである市観光協会の根橋洋行(ねばしひろゆき)理事(53)は「専門性の高い歴史という分野を一般の方も親しみやすい観光に結びつけられるかがポイント。用具の調達や担い手不足といった課題はあるが、官民一体となって魅力ある観光資源に育てていきたい」と話している。