ブルーベリー観光農園増えてます 「農業は財産」これが練馬の生きる道
観光農園は省力化できるメリット 農業離れ対策に
練馬区は農業を区の財産と位置づけています。そうしたことから、練馬区は昨年に「農の学校」を開設。新たな農業の担い手の育成も始めています。ほかにも加速する農業離れ対策として、観光農園事業をスタートさせています。 練馬区が農業活性化策として打ち出した観光農園事業は、2007(平成19)年に8園からスタート。観光農園事業を始めたきっかけは何だったのでしょうか? 「区民の間に自然と触れ合いたいという潜在的ニーズがあったことがきっかけになっているのは農業体験農園と同じですが、農業体験農園だと小さな子供にはハードルが高いのが難点です。その点、観光農園なら親子連れで気軽に楽しめます。観光農園で収穫できるフルーツをブルーベリーにしたのも、小さな子供でも手の届く位置に実がなることが理由です。一方、受け入れ側の農家にも、観光農園なら摘み取りの人手や手間といった負担を軽減できるメリットがあります。特に、昨今の農家は高齢者や就農人口の減少で人手が不足していますから、省力化できる観光農園に力を入れている農家が増えているのです」(同)。
ブルーベリー以外の果物を手がけられるか、課題
現在、練馬区内の観光農園は31園にまで拡大し、昨年の来園者は約3万4000人にまで増加しています。区外のみならず、埼玉県や神奈川県から訪れるファミリーも珍しくありません。 順調に来園者数を増やしてきた練馬区の観光農園ですが、課題はまだあります。ブルーベリーの収穫期は6月下旬から9月中旬まで。最近は温暖化の影響で、収穫時期は早まる傾向にあります。そのため、9月上旬にはブルーベリーの収穫ができなくなっています。営業期間が短縮することは、観光農園に力を入れている農家にとっては死活問題です。そのため、練馬区はブルーベリー以外のフルーツでも観光農園ができないかを模索しています。 「練馬は江戸時代からダイコンが有名ですが、ダイコンは観光農園には向きません。そのほかにも練馬で生産が盛んな柿・イチゴ・ミカンなどを観光農園で収穫できるようにしようという声もありますが、まだ検討段階です」(同)。 近年、食料自給の観点からではなく、観光や環境、防災といった面からも農地の機能は再評価されつつあります。それだけに観光と組み合わせることで多くの人の関心を呼び、都市農業を活性化させようとする練馬区の取り組みは、今後も目が離せません。 小川裕夫=フリーランスライター