刺し身のつまが海を救う? 「養殖藻場」で魚やプランクトンが増加 東京の一般社団法人が実験結果まとめる 熊本県・天草のトサカノリなど
海藻の生態調査や栽培技術の普及に取り組む一般社団法人グッドシー(東京)は、海藻を養殖して人工的につくった藻場[もば]により、魚類など一帯の水生生物が増えたとする調査結果を公表した。熊本県天草市など国内3カ所で実施した実験データをまとめた。 漁獲量が減少している天草市のトサカノリ、北海道函館市のコンブ、愛媛県今治市のヒジキで実験。このうち天草市では2023年11月から24年4月にかけて実施した。 トサカノリは刺し身のつまやサラダに使われる紅色の海藻。実験では種苗生産したトサカノリを食害に遭わないようかごに入れ、天草市深海町[ふかみまち]沖に数百~千個設置した。この「養殖藻場」内外の海水データや周辺生物の胃の内容物を調べたところ、藻場内では植物プランクトンの一種の珪藻[けいそう]類が藻場外の25倍に、魚類が36倍に増えていた。 グッドシーの蜂谷潤理事は「人工的につくった藻場でも、天然の藻場と同じく生態系の回復に貢献できることが裏付けられた」と話した。
養殖藻場の普及には、海藻の需要拡大や栽培の効率化によって、海藻養殖を漁業者の新たな収益として定着させる必要がある。グッドシーは18日、養殖藻場を紹介するイベントを都内で開催。海藻の活用策を考えるパネルディスカッションや海藻料理の試食会もあり、社会貢献活動に関心を持つ大手企業の関係者ら約100人が集まった。 環境省によると、水生生物の産卵や幼魚の成育場所となる天然の藻場は年間6千ヘクタールのペースで減少している。温暖化やウニなどの食害が原因。熊本県内では藻場の再生に向けて、海草のアマモを使った取り組みが各地で続いている。(中尾有希)