2年ぶりに開催されたビーチレスリングって何だ?
足りなった五輪存続運動への仕掛け
ただ、いくつか残念だったことがある。 そのひとつは、女子のウェアに“ビーチ”を感じさせるものが乏しかったことだ。せっかく海水浴場で開催されているのに、出場する選手たちはレスリングの試合用ウェア、もしくはTシャツとハーフパンツばかりだった。それでは、屋内のレスリングマット上で練習している風景と何も変わらない。女子にとって水着でビーチレスリングに挑むのは難しいだろうが、女子ボクシングや女子の総合格闘技選手のように、せめてセパレートのウェアで“ビーチ”らしさを演出する心配りが欲しい。 ビーチレスリングは、もともと、レスリングの普及と、国際レスリング連盟が苦手とするショーアップを目的として立ち上げた将来の新種目候補だ。それならば、華やかな見た目を忘れてはならないだろう。 レスリングが五輪の中核競技から除外され、2020年から五輪競技でなくなるかもしれない事態に陥ったのはたった半年前だ。その際、様々な問題点が指摘された。そのなかに「観客からのわかりづらさ」「テレビ放送には向かない地味さ」などが挙げられた。ビーチレスリングの魅力は、その問題点を解決するのにうってつけの特徴をもっている。この特徴を生かした演出などを分析しオリンピックのレスリングへフィードバックすべきだろう。 今大会では、これまでの五輪競技存続活動への協力へのお礼の言葉はあったが、継続して積極的に働きかけている様子がみられなかった。現在、2020年五輪の競技として残された最後の1枠を争う3競技にレスリングは残っている。だが、9月のIOC総会に向けてもっと競技の魅力をアピールしなければならない。さらに五輪存続が決まった後も継続して「つまらない」とは言わせない面白さを演出してゆかねば再び同じ状況に陥る可能性がある。 国際レスリング連盟はSNSを利用した「the #TakeAStance campaign」を展開している。レスリングの構えをとっている写真を #TakeAStance というハッシュタグ付きでアップロードして盛 り上げていこうという草の根運動だ。ところが、この日の会場では、そういったキャンペーンが行われているという告知はなかった。海水浴場でもある会場でキャンペーンを呼びかけ、一般の海水浴客がスマートフォンで参加してくれるような広がり方を見せれば、国際的にも認知度アップのチャンスになったはずだったのだが……。 (文責・横森綾/フリーライター)