半導体バブルはいつまで続くのか…今さら聞けない「エヌビディア、TSMC好調のワケ」
■日本の半導体企業は「補完」の関係性 図表4のように、半導体の製造工程にはいくつかの複雑なステップがあります。 半導体の性能向上にあたっては、「成膜」や「検査」など、それぞれの分野で高い技術が要求されます。近年ではAIやIoT、あるいは自動運転において、膨大なデータの高速処理が求められ、半導体自体も高性能化がますます求められるようになっています。 こうした前提を押さえたうえで、株式市場で活況の国内5社を、得意分野ごとに並べてみましょう。一部重なる領域もありますが、各社には役割があり、競合というより補完の関係にあります。たとえるなら、ラーメン業界において「ずんどう」「製麺機」「ガスコンロ」「食洗器」が競合しないのと、似ています。 ---------- ●東京エレクトロン:成膜、エッチングなど前工程 ●アドバンテスト:最終検査 ●ディスコ:ウェーハの「切る・削る・磨く」 ●レーザーテック:フォトマスク(原版)の欠陥検査 ●スクリーン:洗浄 ---------- 図表5は2021年3月期からの営業利益の推移です(2025年度の予想も入っています)。収益規模としては東京エレクトロンが圧倒的であるものの、他の4社も増益傾向です。 近年の半導体株ブームはとかくAIと関連づけられますが、IoTや自動運転ほか、伝統的な電気機器の需要回復期待もあります。「世界で半導体市況が盛り上がれば、この5社にも追い風が吹く」との期待が、近年の株価高騰をもたらしているといえます。 ■半導体株の最大のリスク さて、盛り上がり続ける半導体株ですが、リスクはないのでしょうか。くり返し述べているように、半導体の盛り上がりはAIの進化と同時並行です。そのため、AIブームの行き先が読めないことが半導体株にとって最大のリスクでしょう。 もちろんこのまま技術的発展を遂げ続け、数年後には予想をはるかに超えるとてつもない世界を実現する可能性はあります。しかし同時に、世界の巨大企業が「あまりにも高い値段でエヌビディアのGPUを買うのはやりすぎだった」と、現在の熱狂を振り返ることになる可能性も否めません。そうなれば、過剰な投資の反動で、市況が冷え込む恐れもあります。 また、米中対立などの地政学リスクも大きなポイントでしょう。先ほど説明したように、半導体の世界ではグローバルな水平分業が進んでいます。各国の間で貿易摩擦が強まれば、半導体のサプライチェーンが寸断され、あらゆる産業でドミノ倒し的に問題が波及する恐れがあります。 いずれのシナリオも、過去の経験則から導けるリスクではありません。過度に不安をあおるつもりはありませんが、熱狂的な株高が起こっているときも、こうしたリスクは頭の片隅に置いておきたいものです。 ---------- 堀江 貴文(ほりえ・たかふみ) 実業家 1972年、福岡県生まれ。ロケットエンジンの開発や、スマホアプリのプロデュース、また予防医療普及協会理事として予防医療を啓蒙するなど、幅広い分野で活動中。また、会員制サロン「堀江貴文イノベーション大学校(HIU)」では、1500名近い会員とともに多彩なプロジェクトを展開。『ゼロ』『本音で生きる』『多動力』『東京改造計画』『将来の夢なんか、いま叶えろ。』など著書多数。 ---------- ---------- 後藤 達也(ごとう・たつや) 経済ジャーナリスト 1980年生まれ。2022年に日本経済新聞社の記者をやめ、独立。経済ニュースを「わかりやすく、おもしろく」をモットーに、SNSを軸に活動中。経済や投資に馴染みのない人を念頭に、偏りのない情報の発信を目指している。国民の金融リテラシーの健全な向上に少しでも貢献できればと思っている。テレビ東京『WBS(ワールドビジネスサテライト)』レギュラーコメンテーター。X(旧Twitter)フォロワー数72万人、YouTubeチャンネル登録者数31万人、note有料会員は2.9万人。 ----------
実業家 堀江 貴文、ジャーナリスト 後藤 達也