ネット広告を荒らす「悪意」に社会は勝てるのか 広告市場は過去最高でもメディアが暗い理由
インターネット広告費が順調に伸びている中、新聞と雑誌のデジタル版の広告費が下がっているという異変が起きている。ネット広告の成長から、旧来のメディアが振り落とされようとしているのではないか――。 【画像】2021年は雑誌デジタルの成長により、雑誌全体の広告収入が上向いた 2月27日、電通が前年の日本の広告市場を集計する「日本の広告費」を発表した。2023年は日本の総広告費が過去最高の7兆3167億円になった。もちろん牽引役はインターネット広告費で、3兆3330億円と前年から7.8%も増えている。
■テレビ広告費とインターネット広告費の関係 私は例年、数字として大きいテレビ広告費とインターネット広告費の関係に注目してきた。2023年は地上波テレビ広告費が1兆6095億円と、前年から4%下がった。ネット広告費はその2倍以上だ。地上波テレビ広告費がネット広告費に抜かれたのは2019年だったが、それからたった4年で倍以上に膨らんだのは衝撃だった。 だが他のメディアについて見ていくと、それより驚いたことがある。新聞デジタル・雑誌デジタルの数字だ。
電通の「日本の広告費」の中に、2018年から「マス四媒体由来のデジタル広告費」という項目ができた。新聞・雑誌・ラジオ・テレビそれぞれのメディアのデジタル版の広告収入を抽出した数字だ。元々の紙や電波媒体の広告費より金額は小さいが、どれも順調に成長していた。 特に「雑誌デジタル広告費」は注目だった。紙媒体の雑誌広告費の減少を補う勢いが出てきたのだ。特にコロナ禍でガクンと雑誌広告が減少した一方で雑誌デジタルは大きく伸び、2021年には紙媒体の収入源を補って、紙とデジタルを合計すると雑誌全体では広告収入がプラスに転じている。
■「紙とデジタルの両翼」になるはずが… マス媒体はデジタルを活用することで、広告収入減少をカバーできるはずだからDXを進めるべきとの論がメディア業界にはあった。雑誌メディアはその成功例と言えた。新聞デジタルは2022年でもまだ221億円で、紙の新聞の広告収入3697億円の10分の1にも満たない。だが雑誌デジタルは2022年には610億円に達し、紙の雑誌は1140億円に落ちたものの、このまま進めばデジタルと紙が雑誌広告の両翼となる気配だった。