ルイ・ヴィトンによるウォッチプライズの第1回目受賞者はラウル・パジェス
独立時計師であるラウル・パジェスが作る美しくもこだわりの強い時計の魅力に迫る。 【写真を見る】受賞の決め手となった時計とは
独立系時計メイキングの発展のためのアワード
ルイ・ヴィトンは、第1回「Louis Vuitton Watch Prize for Independent Creatives (ルイ・ヴィトン ウォッチ プライズ フォー インディペンデント クリエイティブズ)インディペンデント クリエイティブズ」の受賞者にラウル・パジェスを選出した。 「Louis Vuitton Watch Prize for Independent Creatives」は、ルイ・ヴィトンのウォッチ部門のディレクターであるジャン・アルノーによって創設され、今年が第1回目の開催となった。2年に一度開催されるアワードは、独立系ウォッチメイキングの促進と支援を目的としており、優れた革新性や大胆さ、匠の技であるサヴォアフェールを讃える。また、次世代の時計師を目指して邁進するクリエイティブな才能の発掘にも寄与する。 対象となるのは、世界中の独立系ウォッチデザイナーや職人、起業家で、記念すべき第1回目となる今回は、1000点近い応募が寄せられた。時計専門のジャーナリストや、アーティスト、デザイナーに加えウォッチ愛好家も含むウォッチエキスパートで構成される国際的な委員会が品評。1.デザインと美学、2.クリエイティビティと大胆さ、3.技術的イノベーション、4.ディテールと仕上げ、5.複雑性の5つの基準に基づいて評価された。 最終審査を行ったのは5名の専門家委員で、アワーグラスのグループマネージングディレクターであるマイケル・テイが審査員長を務めた。タグ・ホイヤーのムーブメントディレクターであるキャロル・フォレスティエ‐カザピ、著名なコレクターで作家のアウロ・モンタナーリ、独立系ウォッチメーカーでアトリエ・アクリヴィアの設立者のレジェップ・レジェピ、独立系ウォッチ専門ジャーナリストで時計専門WEBメディア「SJXウォッチズ」のファウンダー、ジアシャン・スーが最終審査を行った。 グランプリに輝いたラウル・パジェスは、スイスのヌーシャテルにある小さな村を拠点に、時計の修復師としてキャリアを積み、2012年に独立系ウォッチメーカーとなった。現在、年4本ほどのタイムピースを制作しているが、デザインから製造、組み立て、仕上げに至るまでそのすべての工程を手作業で行っている。 ■ピボット・デテント脱進機搭載のレギュレーター 受賞作の「RP1-レギュラトゥール・ア・デタント」は、ステンレススティール製の手巻き時計で、ピボット・デテント脱進機を搭載したユニークなムーブメントを採用している。 高精度を謳うムーブメントを搭載しているゆえ、時分秒が独立して表示されるレギュレーターを採用。分表示のインデックスは切り込みで表現するという手が込んだ作りになっている。自身の名前である「PAGÈS」は、5時位置と6時位置のフランジに小さく刻まれ、4つのビスの他にダイヤルの装飾はなく、極めて高い視認性を誇る。ダイヤルカラーはグレーがかったベージュで、6時位置の秒を表示するサブダイヤルには水色を採用するなど、ミニマルながら温もりも感じられる、まるでル・コルビュジェの近代建築のような佇まいだ。 ラウル・パジェスには、タイムピースの精度のために不可欠なパーツにインスパイアされたらせん状の優美なトロフィーが授与されされたほか、助成金とプロジェクトのニーズに合わせた時計師、エンジニア、職人などの専任エキスパートチームによる1年間のメンターシップも提供される。このメンターシップは、独立系時計師がエキスパートによる指導を受けることで、創造性と商業的成功を両立させることを目的とした、ユニークで貴重な機会となる。2年後に行われる2回目のアワードでどんな個性的なウォッチメーカーが現れるのか今から楽しみだ。 ■ルイ・ヴィトン クライアントサービス TEL:0120-00-1854
編集と文・遠藤加奈(GQ)