通勤電車内で泥酔客から女性を助け“骨折”のヒーローも… 裁判所が「労災」認めなかった“余計なひと言”
労災申請するが無念
Xさんは「これは通勤中に起きたケガだから通勤災害にあたる」として労災申請しました。 しかし、労働基準監督署は「支給しない」と判断。理由は「その負傷は通勤に起因するものとは認められない」というものでした。 Xさんは裁判所に判断を仰ぎました。
ジャッジ
Xさんの敗訴です...。裁判所は「通勤災害にあたらない。なぜなら、Xさんのケガは通勤の中断中または中断後に発生したと認められるからである」と判断しました。 ▼ 労災マメ知識 原則として、通勤中の事故については労災が下ります。以下の条文です。 ■ 労災保険法 第7条2項 前項第三号の通勤とは、労働者が、就業に関し、次に掲げる移動を、合理的な経路及び方法により行うことをいい、業務の性質を有するものを除くものとする。 一 住居と就業の場所との間の往復 (以下、略) Q. 今回のXさんは普段どおりの通勤経路でケガさせられたんですから、労災が下りるのでは? A. いい質問ですね~。実は、以下のシバリがあるんです。「移動を中断した場合は通勤災害とは認めない」という規定です。 ■ 労災保険法 第7条3項 労働者が、前項各号に掲げる移動の経路を逸脱し、又は同項各号に掲げる移動を中断した場合においては、当該逸脱又は中断の間及びその後の同項各号に掲げる移動は、第一項第三号の通勤としない。ただし、当該逸脱又は中断が、日常生活上必要な行為であつて厚生労働省令で定めるものをやむを得ない事由により行うための最小限度のものである場合は、当該逸脱又は中断の間を除き、この限りでない。 ーー 裁判所さん、通勤が【中断している】と判断した理由はどこにあるのでしょうか? 裁判所 「電車内で他の乗客に注意する行為が通勤行為にあたらないことは明らかだし、電車内で迷惑行為をするヤカラに遭遇することが日常的とはいえない。そういうヤカラを見つけた時の対応としては駅係員や警察に通報したり車内の非常通報装置を利用したりすることも考えられる。さらに、今回の事件はYさんが駅でいったん降りて、Xさんとの間でXさんも降車するかどうかのやりとりを交わしている。以上によれば、Xさんのケガが通勤中に発生したとしても、通勤との関連性は希薄であり、通勤の中断中または中断後にケガが発生したと認めるのが相当だからです」