ドローン対策の究極版? 甲羅のように身を覆った「亀戦車」がロシア軍に出現
1916年、英国の技師ウィリアム・トリトンは新しいタイプの戦車を設計する。彼がそれを設計したのは、第1次世界大戦の戦場で機械化戦に登場したばかりの戦車が直面した、最大の脅威から乗員を守るためだった。当時、戦車にとって最大の脅威は大砲だった。 そうして誕生したのが「フライング・エレファント」である。この戦車はいわば、砲を備え、最大で厚さ76mmの鋼板に包まれた、頑丈なトラクターだった。車体横にだらりと垂れたように張られた装甲が象の耳のように見えることから、この名前が付けられたらしい。 それから108年後、ロシアの創意ある技師たちは少なくとも1両の戦車を改造した。彼らがその改造を施したのは明らかに、ウクライナの戦場で戦車が直面している最大の脅威から乗員を守るためだ。最大の脅威というのはもちろん、この戦争で機械化戦の新たな主力として台頭してきた、爆薬を積んだ小型ドローン(無人機)である。 ロシアの技師たちはこの戦車に、車体全体を覆い、主砲の砲身も半分くらい隠れる大きな装甲のルーフ(屋根)を取り付けた。この現代版フライング・エレファントは最近、ウクライナ東部ドネツク州の都市クラスノホリウカ付近で、ウクライナ軍の陣地に対する攻撃に参加した。 この不格好な戦車を見つけたのも、やはりウクライナ軍のドローンだった。困惑した操縦士らはその映像のスクリーンショットをソーシャルメディアで共有した。「アストライア・インテル」(@astraiaintel)というOSINT(オープンソース・インテリジェンス)アナリストは、T-62かT-72、T-80、T-90とみられるこの戦車を亀に見立て、「T-90のTはturtle(亀)のTじゃないかと疑っていたけど、そのとおりだったみたいだ」と皮肉っている。 この戦車は「甲羅装甲」に邪魔されて砲塔をろくに回転できなくなっているほか、一目でわかるその重さと大きさのせいで、亀ほどまでとは言わずともかなり鈍足になっているに違いない。とはいえ、この奇妙な改造でとりわけ悲劇的なのは、装甲を加えた当の目的すら達成できそうにないという点だ。