追悼・西田敏行さん――多彩に役を演じ分ける国民的俳優
西田さんは釣りと奥さんのみち子さんをこよなく愛するハマちゃんを、22年にわたり熱演。三國連太郎さん演じるスーさんとの丁々発止も軽快で、カラリとした笑いを届けてくれるハマちゃん役は、西田さんにとってハマり役となりました。 シリーズ最後の作品となった『釣りバカ日誌20 ファイナル』公開時の舞台挨拶では司会を務めさせていただいたのですが、巧みな話術でお客様を楽しませる一方で、大先輩の三國連太郎さんへの気遣いを忘れないジェントルマンなふるまいが、今でも脳裏に焼き付いています。 『釣りバカ日誌』シリーズのロケ地22ヶ所を巡った御礼行脚舞台挨拶では、イベント当日がお誕生日だった三國連太郎さんのために、ハッピーバースデーの歌を披露して下さったのも懐かしい思い出です。
振り返ってみると、西田さんはどんな時も、観客を喜ばせることを第一に考えてらっしゃったなぁと思います。ドラマや映画への出演は精力的に続けていたものの、近年は椅子に座ってお芝居をすることが多かったことは、視聴者の方もお気づきだったかもしれません。足腰を悪くなさっていることは周知の事実でした。 今だから言える話なのですが、映画『任俠学園』初日舞台挨拶でご一緒させていただいた時も、決して良い状態ではありませんでした。そのため、舞台周りは西田さんシフトに。舞台に上がるまでの導線は、お客様から見えないようにパーテーションで目隠し。トークパートは、西田さんはじめ登壇者の皆さんは椅子に座って進行。 それでも、会場に駆けつけて下さったファンに心配をかけたくないという思いからでしょうか。ステージへの入退場ではステッキを片手に溌剌と歩き、フォトセッション時はすっくと立ち、笑顔でフラッシュを浴びていた西田さん。 弱々しい姿をお客様には見せたくない。俳優としての矜持を貫く姿勢を目の当たりにさせていただき、いま思い出しても、ただただ敬服するばかりです。