姉婿名義の分譲マンションに住んでいた母が死去。母が毎月ローン分を渡していた場合、相続はどうなる?
「老後は賃貸物件を借りられない・住宅ローンを組めない」と聞いたことがある人も多いだろう。定年後仕事につかず、年金暮らしになると、収入面で審査に通りづらい。住宅ローンを組む際にも年齢制限があるため、借りづらい状況となるようだ。 そうしたことから、子どもが何らかの手助けをするケースもあるのだが、思わぬ相続トラブルになることもあるので注意が必要だ。 税理士に無料で税務相談ができるQ&Aサービス「みんなの税務相談」には、ローン審査が通らなかった亡き母の代わりに、娘婿がローンを組んでいたことから、姉妹間で相続トラブルになったという相談が寄せられている。 「生前母は姉の夫名義で購入した分譲マンションに住み、ローン返済は母自身が10年に渡りしていました。ローンはまだ10年近くありますが、姉夫婦はそのマンションを売却する相談をしています。マンションの名義は義兄でも母の財産の一部とはならないのでしょうか?」 妹としては、「ローン返済をした分は母親の相続財産になるのではないか、であれば自身も相続する権利があるのではないか」と思っているのだ。なお母親がどのようにローン返済をしていたかは不明だ。 このような場合、そのマンションの一部は相続財産になるのだろうか。宮路幸人税理士に聞いた。 ●総額のうち母が支払った部分を「母親名義に変更」すれば相続財産の対象に ーー娘婿の名義でローンを組んだマンションに母親が住み、実際には母親がローン費用を払っていた場合、そのマンションの一部は母親の相続財産として、妹も相続する権利があるのでしょうか? 「娘婿名義で購入し、そのロ-ン代金を母親が返済していた場合は、基本的には母親から娘婿への『贈与』として認定されることとなるため、相続財産にはなりません。 相続財産とするための方法のひとつとしては、そのマンションの支払総額のうち、『実質的に母が支払った部分を母親名義に変更』するという方法があります。その場合、登記を変更した部分については母親の相続財産となります。 ただし、どのようにロ-ンの返済に充てられたのか、母親の預金通帳などからの証明が必要です。」 ●「住宅ロ-ンの名義貸し」に要注意。母親が購入時に頭金を払う方法も ーーこのようなケースの場合、どのように対処すれば相続税あるいは贈与税に関する問題を回避することができるのでしょうか? 「リタイアした方や高齢者の方ですと、それだけで住宅ローンの審査が受けられない場合があります。そのとき、子どもなどの名義を借りてローンを組んでしまうと、『住宅ロ-ンの名義貸し』となります。これは正式に認められてはいないため、名義貸しをして借金をすると税務的にも法律的にもさまざまな問題が生じてしまいます。 今回のケースでも、ローンの名義人はあくまでも娘婿です。娘婿が母からロ-ン返済額を受け取り、娘婿自身の名前で返済することになりますので、母から娘婿に対する『贈与』となります。そのため、母から娘婿への贈与が年間110万円を超える場合には、原則贈与税の申告・納税が必要です。 マンションは娘婿名義で購入しているので、賃貸契約を結び、母が賃料を娘婿に支払うという方法も考えられます。しかし、住宅ロ-ン=自身が住むことを条件に銀行から借り入れているため、住宅ロ-ン返済中に賃貸に出すことは銀行が認めないと思われます。 なお余談ですが、銀行がやむを得ないと判断して、賃貸に出すことを許可してくれた場合には、娘婿は家賃収入に関して確定申告が必要となります。 母親が毎月どのように返済額を工面していたかが不明でありますが、年金以外のお金を取り崩して支払っているような場合は、アドバイスとしては、月々のローン返済分を母親が支払うのではなく、母親が購入時に頭金を支払い、その分を母親名義にしておくという方法が考えられます。この場合、母親の名義分は相続財産となります。 またほかの方法として、その資金を『住宅取得資金の贈与』として娘に贈与し、娘の名義で登記をするということも考えられるでしょう。」 【取材協力税理士】 宮路 幸人 (みやじ・ゆきひと)税理士 官報合格。CFP・宅建士・マンション管理士等を保有し、不動産関係が得意。趣味はお酒。ワインエキスパ-ト、利酒師なども保有。 事務所名 :多賀谷会計事務所
弁護士ドットコムニュース編集部