安保法制の基本の「き」 何が変わる? 早稲田塾講師・坂東太郎の時事用語
◎PKOの役割強化と国際貢献
今回の安保法案は集団的自衛権の行使に関わる部分と従来からの国際貢献活動の拡充という二面性を持ってきます。後者が国連決議のもとで自衛隊が他国軍へ後方支援できる国際平和支援法案と改正国連平和維持活動(PKO)協力法です。 PKOとは戦闘終結した後で再び紛争へと逆戻りしないよう受け入れ国の許可を得て紛争防止や治安維持といった活動をする行為です。今回の改正案では派遣された自衛隊員が、これまで自らか、自らにごく近い者への危険に限って認められていた武器使用の範囲を広めます。威嚇射撃や駆けつけ警護などです。後者は派遣先から遠くにある他国の部隊や非政府組織などの要請を受けて武器を用いて救出する行為です。 また改正案では国連の要請を受けていない海外派遣も可能になります。例えば2003年に発生したイラク戦争後の支援活動です。PKOも実施されなかったため「イラク復興特別措置法」を制定して自衛隊を派遣しました。あくまで特別措置の時間が限られた法律で、事態が発生するごとに国会で成立させなければなりません。改正案可決により不要となりました。
◎グレーゾーン事態
今回の法改正では具体的な決めごとがなく見送り。グレーゾーンとは文字通り「隙間」の事態。外国の武装集団や特殊部隊などが漁業者などを装って離島を占拠したり、潜水艦が海面下のまま領海内にとどまったりという状況が考えられます。治安維持を担う警察や海の警察でもある海上保安庁で対応が難しいとはいえ、自衛隊が防衛出動する「有事」ともいえない状況です。
◎国会の事前承認
安保国会最終盤になって与党の自民・公明両党は次世代の党(参議院議員5人)、日本を元気にする会(同5人)、新党改革(同1人)の野党3党と修正協議をして「存立危機事態」での集団的自衛権の行使に、例外なき国会の事前承認を求めるなどとした付帯決議を参議院で行い、それを尊重する旨の閣議決定も得たいと提案。野党3党は合意して本会議での法案賛成に傾きました。 おそらく「与党による採決強行」という批判を少しでも和らげるのが狙いでしょう。付帯決議ではたいしたことありません。法律は本則と附則に分かれ、せめて附則に書き込んだならばともかく委員会の意思表明に過ぎない付帯決議に法的拘束力はなく「きっと尊重してくれるだろう」程度となります。
--------------------------------------------------- ■坂東太郎(ばんどう・たろう) 毎日新聞記者などを経て現在、早稲田塾論文科講師、日本ニュース時事能力検定協会監事、十文字学園女子大学非常勤講師を務める。著書に『マスコミの秘密』『時事問題の裏技』『ニュースの歴史学』など。【早稲田塾公式サイト】