怒る気にもなれません…敏腕経営者だった88歳の母が死去。母の口座から消えた3000万円の行方と母の世話を一手に引き受けた〈65歳長女〉が白状した呆れた言い訳の中身とは?【相続の専門家が解説】
税理士から「贈与」に引っかかるお金が多いという指摘を…
和男さんは、介護をする過程で母が現金を下ろすようにに指示していたのかも知れないと思い、何も言わなかったのですが、税理士から「贈与」に引っ掛かるかもしれないお金が多いと指摘を受けたのです。 母親の預金は同居する姉が管理していて、離れている和男さんと弟は任せてきたのですが、姉は前の貯金通帳は捨てたと言いますし、母から「お金を下ろして」と言われ、下ろした後は母親が何に使ったかは知らないと言います。 母親はお店をやめてからは病気が見つかり、この5年間位は入退院を繰り返していて、病院と介護施設を出たり入ったり。他にお金を使うことは考えられません。
贈与は相続財産になる
姉は母親の二つの預金口座から少しずつ引き出し、2,000万円あった口座はゼロになっています。この他にも満期になった定期預金1,000万円も自分のものにしています。 いずれも母親からもらったと姉はいうのですが、申告を担当する税理士から、相続財産として加算しないといけないと指摘されました。 本来ならば、預金は3分の1とする遺言書により3人で分けるべきところですが、姉は自分がもらったというばかり。和男さんと弟はお金が欲しいわけではなく、姉に本当のことを言ってもらいたいという気持ちですが……。和男さんは、どのように対処すればいいか迷っていると言います。
他人なら犯罪でも身内には通用しない
亡くなる3年前の贈与は相続財産として加算しますから、まずは相続財産として申告、納税することが必須です。3人で分けることを姉に提案してみるべきですが、姉は母親からもらったので弟たちに分けるなんてとんでもないということでしょう。 まして母親の了解なしに自分のものにしたとすれば、他人なら犯罪ですが、身内の場合は判断が難しいため、家族の話し合いで解決することになります。姉が認めなければもらいきりで、一人勝ちという結果となります。
調停してもいいことはない
解決する手段として調停に持ち込み、事実を明らかにしていく方法もありますが、「母親の依頼で下ろして渡したのであとは知らない」と姉が言い張れば、それで済んでしまうこともあり、結果は変わらない可能性が高いと言えます。 姉に法律や理屈を突きつけても逆切れされて関係は悪化することは想像に難くありません。きょうだいよりもお金に頼るのは残念ですが、姉の選択で致し方ないと受け止めて切り替えていったほうが賢明だと言えます。 結局和男さんは、「弟とも相談してみます」と帰られました。後味が良いとは言えない結末になりましたが、「話して少し気持ちが楽になりました」と帰った和男さんの後ろ姿に少しホッとしました。 ※登場人物は仮名です。プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。 曽根 惠子 株式会社夢相続代表取締役 公認不動産コンサルティングマスター 相続対策専門士 ◆相続対策専門士とは?◆ 公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。 「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
曽根 惠子
【関連記事】
- 郷里の母への仕送りを、母がすべて私名義の口座に貯金していました。このお金に相続税は課税されますか?【弁護士が回答】
- 【年金月38万円・60代夫婦】余裕の老後生活へシフトのはずが一転。郷里の兄嫁、クルマに90代の母を乗せ、遠路はるばるやってきて…人生最大の番狂わせに「いまは無の境地」
- 「もうムリ、ごめんね」50代独身ひとりっ子、年金15万円・80代の同居母を残し、生まれて初めて実家を離れた切実理由
- 30代長男の死…嫁は「私たちを頼らないでください」と言い残し、孫を連れて海外移住。食堂で働き詰めの高齢母が、涙をこらえて遺した〈まさかの遺言書〉
- 「親が亡くなったら、真っ先にコンビニへ走る」が新常識!相続手続きで困らないためにやるべき、たった一つのこと【税理士が解説】