【阪神】田中秀太コーチが考える佐藤輝明の守備「もっともっと普通でいいよと」/新コーチに聞く
阪神の新コーチインタビュー第5回は、ファームコーチから配置転換となった田中秀太内野守備走塁コーチ(47)。今季23失策を喫した佐藤輝は、2軍降格時にも多くの助言を送ってきた。守備力向上への指導方針などを明かした。【聞き手=波部俊之介】 ◇ ◇ ◇ -1軍のコーチとして臨んだ高知・安芸キャンプ 「若い選手が多かったので。輝もファームに来たりもあったし、コミュニケーションを取っている選手が多かったので。意外とスムーズに進んだし、中堅も含めて引っ張ってくれたというか。しっかりやってくれたので、メニューも含めていい流れでできたんじゃないかなと思います」 -今年から1軍コーチ。意識的に変えたこと 「まだ、試合で三塁コーチャーするとかもあるけど、そんなにまだ紅白戦しかしていないし。でもファームでは教えて、なんとか鍛えて鍛えて1軍に上げる。なんとか1軍に使ってもらえる選手を育てる。今度は逆に使える選手をもらって、もしかしたら使えないと思ったら落とさなきゃいけない。このキャンプはどうしても若手が多かったので教えることも多かったけど、やっぱりある程度春になってきたら仕上げていくというか。ちょっとファームのコーチやっている時よりはそういう感覚が無くなるのかな。若い選手も来るけども、やっぱりどんどん絞っていかなきゃいけないと思うし。そういうのはあると思うので。そこの感覚の違いも春になってからじゃないですかね」 -1軍内野守備の課題 「誰がとかはないんですけど、やっぱり送球に関しては、捕ったらアウトにできる野手を目指そうというのはみんなに言っているので。捕球して、どうしてもイレギュラーだったり難しいバウンドだったり。捕れない時もあるんですけど、やっぱり捕ったらアウトにできる選手。そこはみんなで目指そうとは言っている。そこだけはこのキャンプを通じて、まだミスもありましたけど、なんとなく慌てないだとかステップしっかりするとか、そういうところは少し植えつけられたかなというのはあります」 -土の甲子園。エラーを1つでも減らしたい 「それはもちろんね、ミスが少ないに越したことはないし、ミスから失点することが非常に多いんでね。その数を減らしていかなきゃいけない。そのためにじゃあどうしようかというのをみんな、僕も含めて考えながら上げていく。だから数がどうというよりは、2月のキャンプに入ってシーズンに臨むまで、その準備をしっかりできましたよというところまで、まずは作り上げていく方が先かなと思います。シーズンが始まってしまえば、やっぱりやるのは選手なので。そこまでにしっかり選手に準備をさせる。ミスが減るように、いろんなことをお互いコミュニケーションとって、こうしていこうということを詰めていけば自然に減るというか。そこまでの準備が一番大事かなと思っています」 -今季、佐藤輝が2軍に来た時には田中コーチがノックも。佐藤輝の守備については 「輝の守備は良くなっているとか良くなっていないとかじゃなく、そんなめちゃくちゃな(ノックの)数はやっていない。(2軍に)落ちてきた時にいろんな話ができたので。このキャンプに来たから、これをああする、こうするという課題というか、なんて言うのかな。2人で話し合う点がそんなにたくさんではなかった。(キャンプに)入りやすかったというか、落ちて来た時に、これをこうしたら良くなるよね、こうしていこうねという話をして1軍に上がっていったので。それの継続と、本人もスローイングのところは自分でも気にしてるところがあった。そこに対してステップをこうしていこうという体の入れ方とか、そういうところは話しましたけど」 ーテーマを共有できた状態で秋季キャンプに入れた 「そうですね。だから意外とコミュニケーションは僕は取れたんじゃないかなと。多分、結構あいつも悔しかったと思うので。それはこうノック打っていたり、練習していてそういう風に感じてやっているんだなというところを僕らも感じていたので。逆にだから『数だけやればいい』じゃなくて、しっかりやるところまでやらせようという。だから、やっぱり数が多くなると疲れてきて集中力がなくなることもあるので、もうそれはもうやらさないで。体力は意外とあるので。逆に、ちゃんとした形で数をやらせようということで、僕はやりたかったので」 -具体的にはどういう部分を取り組もうと? 「大ざっぱに言ったら、ステップのところ。そこは改善というか、意識の持ち方じゃないかなと」 -今季はスローイングのミスが多かった 「多かったですよね。ちょっと器用なので。普通の人じゃできないようなね、ジャンピングスローをしてみたりとか。できてしまうので。そういう、逆にちょっとそんな高度なプレーいらないよという。レベルを落としたわけじゃないんですけどね。もっともっと普通でいいよっていう感じですね」 -基本の形を 「まあ、できてしまうからそれをやってしまうけど、そんなことしなくていいよっていうイメージはあります。だからなんか、みんなエラー数が多いから下手だと思っているかもだけど、全然そんな風には思っていないし。僕は本人にも、全然下手くそじゃないと思うよっていう話はしているので」 -ああいう派手なプレーが禁止というわけでは無い 「全然全然。それは全くないです。投げるのって結局は本人なんで。自分の投げられるパターンを持っておくのはいいこと。ただ、自分がこれが好きだからこればかりというわけにもいかないし。もっともっと逆に言ったらミスが減る投げ方があるよというのは話したので」 -監督も佐藤輝選手には期待している。守備はより良くしていきたい 「それはもう僕もそうだし、本人もそう思ってるし。そうならないとチームも困るし。そこはしっかり、また継続して。またキャンプが終わる時には輝だけじゃなくて内野手みんなで話をして。それぞれ課題があるんでね。その課題を持って返して。やっぱり最後は自分たちで考えてやることが大事だから。そのヒントだったり、こういうことをやったらいいねっていう話をして、このキャンプを終わって。次の春につなげて欲しいなと思いますけどね」 -春季キャンプでの指導はまた変わってくるのか 「どうなんですかね。でも、やっぱりちょっとこの秋の『鍛える』というイメージとはまた変わってくると思うので。僕も初めてなので。ずっと2軍にいたから鍛えることばかりだったので、そこはまた藤本(総合)コーチに相談しながらというか、教えてもらいながら。ランナーコーチャーもそうだけど、いろんなことを教えてもらわないといけないですね」 -昨春、佐藤輝の特守は数を受けるイメージだった。どちらかと言うと短い時間でもいいからしっかりとした形を求めていくのか 「長くやるときは『長くやるよ』とは本人にも言っているし、特別に短いときは朝から『短いよ』と言っているし。何とかいい姿勢で取り組んできているので、それを崩さないようにはしていますけど。多分、春もアイツはそれぐらいの姿勢で来ると思うので。やる日は『やるよ』と本人にも言っているし。でも結構、守備練習自体は他の選手も含めて結構、(秋季キャンプでも)やっているんですよ。だから、特守だけになると25分とか30分で上がっているけど、全体の守備練習は結構、投げたりが多いので。そういう意味で『守備が足りていない』とかは思っていないですし、『強化練習をやれ』と言ったら、文句を言わないことはないけども、ちゃんとやるので。もっとやらないイメージでしたけど。イメージですよ、そんなに接していないから。あまりこういうことはやらなかったけど、ちゃんとやるようになったし、そういうところは『変わってきたな』と。やっぱりチームを引っ張っていくような選手になるんでしょうから、頑張ってくれていると思いますよ。このキャンプに関してはそういう気持ちも感じています」 -若い内野手も多くいる中で“実績組”の佐藤輝、中野も秋季キャンプ参加、いい刺激を与えてくれたのでは 「あると思いますよ。やっぱり中野のスピード感なんて全然違うし。『これではまだ1軍で通用しないな』と感じているだろうし。体力面もそうだし、やっぱり大事なところで声が出るかとか、この前に(藤川)監督も言われていましたけれども、判断力だったり、そういうところでやっぱり見習うものが多かったと思うし。やっぱり取り組む姿勢だったり、いろんなことをアップからずっと一緒にいるので、見ながら勉強になったと思う。自分に何が足りないかということに気付いていると思うので、そこをまた自分で埋めてきてもらえればな、と思いますけどね」 -小幡も木浪と遊撃争いをして、そこを破れるかどうか 「そこはもう本人次第。小幡も多分そう思っているし、木浪も絶対に譲らないと思っている。そうやってお互いにレベルアップして、チームがいい方向に行けばいいと思う。どちらかは全然僕も分からない。いっぱい(候補は)いた方がいい」 -盗塁数が今年は減ったが 「もちろん、走る練習をして、僕らも走らせる準備はしていきますけど。最終的にまた春になって監督がどういう野球をするか。そういう話はしていますけど、どうなるかは、まだやりながら。僕らはもうとにかくそうやって走れる準備をするだけで。僕らから走らせますとか、そういうのはない。僕らは監督じゃないので」 -紅白戦にフルカウントから走らせたのは意識づけのひとつ 「紅白戦だったので、その守りも含めて、自動スタートしてきたらどうやって守るということも含めてやっていたので。でもこの時期だったらね、やっぱり積極的に走ったらいいと思うので。僕らは春のキャンプもそうだけど、パッと求められた時にできるように準備しておくだけなので」 ◆田中秀太(たなか・しゅうた)1977年(昭52)2月23日、熊本県生まれ。熊本工3年春に甲子園出場。94年ドラフト3位で阪神入団。99年には116試合に出場し15盗塁するなど、俊足巧打の内野手として活躍した。09年に引退後はアマスカウトを務め、20年オフから2軍内野守備走塁コーチに就任。現役時代は通算624試合、200安打、3本塁打、52打点、38盗塁。右投げ左打ち。