bokula.、メジャー初のEPをリリース。人間関係の葛藤や未練が滲むような曲が生まれる理由
音楽をやることで、その人の一部になれてるかもしれない
ーーそういう意味でも、バンドや音楽っていうものがあると、相手と壁を作らずに接することができるのかなと。 「なるほどなるほど。たぶん、いちばん強い武器にはなってると思うんですよね。ギターを持ってない自分はほんまにどうしようもない人なんで(笑)」 ーーそんなにどうしようもないんですか?(笑)。 「バンドやギターやってなかったら、家にずっと閉じもって誰とも関わらないでいると思いますよ。でもギター持ってステージに立ってる時は、すごい自信を持って唄えてる。ステージに立ってる自分と、ステージを降りた自分ってほんまに別もんというか。一気に自信なくなるし、それくらいライヴでスイッチが変わるんですよね」 ーー歌詞の中でも失恋した相手への未練や情けなさみたいなものが出てますよね。 「歌詞を書く時は自信ない時のスイッチなんで、本音が出ちゃってると思います。とくに今回の5曲目の〈最愛のゆくえ.〉はそうで。恋愛系の曲は経験とフィクションを掛け合わせることが多いんですけど、これはもう自分の素のまま」 ーーここで思いを馳せている〈君〉とは、壁もなく深く付き合えていたんじゃないですか? そうじゃなきゃ、こんなずっしりした失恋の曲にならないはずで。 「あぁ……男でも、女でも、自分のことを好きでいてくれる気持ちはすごい大事にしたいと思っていて。さっきも言ったように、そもそも自分なんて好かれていいような人間じゃないと思ってるんで、それでも好意や関心を渡してくれるならちゃんと受け取りたい。そういう気持ちはあるんですよ。だからあっちが素をさらけ出してきてくれるなら、自分もそれにつけ込んでいいのかな?って思えるような気はしてますね」 ーーつけ込んでって(笑)。逆を言えば、えいさんが素をさらけ出したら、相手もさらけ出して向き合ってくれる可能性もあるんじゃないですか? 「ああ、そうなのかな? うーん……そっか。でも自分から素を見せられるくらい心を許せる人って、ほんとに少ないと思います」 ーーふふふ。でも、できるだけ心を許せる人を増やしたい、そう思える人を大事にしたいとは思ってますよね。 「あ、もちろんあります、それは。ただ、やっぱりそう思われてることに対して、すごい申し訳なくなっちゃうんで。〈こんな自分なのにな〉って」 ーー卑屈な自分はどうしても顔を出すと。そういうのを素直に受け取れる人になりたいと思います? 「めっちゃ思います。でも、そういうのを素直に受け取れる人って、たぶんすごく愛されてきた人だと思うんですよね。だから人のこともすぐ信用できる。自分は信用できる人が周りにいなかったんで……22年間そういう人生だったから、こういう考え方になっていて。これからも人と向き合う時にマイナスから入っちゃう癖はたぶんずっと抜けないですね。すぐに人に心を許せるような人間になれるとは思ってない。でもそれでいいよなって思ってる節もあるんですけどね、自分は」 ーー自分の性格は簡単に変われないけど、ライヴや音楽を鳴らしてる間だけは何かを信じられる瞬間というか。 「そうですね。ライヴの時だけは〈みんな大好き!〉って、ものすごいハッピー人間になっちゃう。こんな広島の田舎もんの音楽を見つけて聴いてくれる人、自分の存在を認めてくれる人がいて、それもひとりやふたりじゃない。自分たちに信用を預けてくれる人がいるっていう事実は間違いなくデカいですね。だからライヴでは自分も好き勝手やっていいんだって思えるし。まあ、その気持ちになれたのもほんとに前のツアーからなんで、ようやくですけど」 ーーどうしてもマイナスを見てしまう人が、音楽やライヴという場では自分をさらけ出せて、そこにいる人と心と心で繋がれるって、とても純粋で美しいことだと思うんですよね。 「ありがたいです。バンドをやっていて、自分も自信がなくてとか、就職が心配でとか、そんな時にすごい救われました、みたいな言葉をめちゃめちゃもらうんです。何も発信してないのに一方的にDMが来ることもあって。こんな自分だけど、音楽をやることで、その人の一部になれてるかもしれないなと思うと、すごい光栄だなと思いますし、そういう人たちとちゃんと向き合って音楽やっていきたいんです」 ーー6曲目の「高鳴り」はまさにそういう曲ですよね。〈限りある人生の一部だけど/限りない人生の一部だから〉っていう。そういう関係を音楽で作っていきたいというか。 「そうですね。この曲だけ配信しないでCDだけに収録するんですけど、それも自分たちのスタンスや考え方をわかってほしいからで。配信のほうがたくさんの人に聴いてもらえる可能性はあるだろうし、そうやって広げていく方法があることもわかってるけど、ここで唄ってる思いは簡単に聴かれてほしくない。まあ、ここにも自分のひねくれが混じってますね」
竹内陽香(音楽と人)