いつの間に?都電荒川線の沿線風景変わる「トンネル工事」の今 雑司ヶ谷―鬼子母神前間の地下に道路開通予定
■沿線の道路が大改造中 この工事は東京都が進める「環状第5の1号線」の整備。渋谷区広尾から北区滝野川までの約14kmの道路で、このうち、明治通りの千登世橋付近と、池袋駅東口駅前広場から延びるグリーン大通りを結ぶ約1.4kmの区間が未整備となっていた。東京都第四建設事務所の担当者は「2028年3月の完成を目指している」と説明する。 未整備区間が開通すると池袋駅周辺の交通混雑が緩和されるという。かつて渋滞の原因とされ姿を消した都電も、今では道路整備の工事としっかり共存している。
現在、地上の都電荒川線と地下の東京メトロ副都心線に挟まれた空間を通る、片側1車線ずつ2車線の道路トンネルの躯体は完成済み。今後は工事に伴って移設した都電の軌道復旧工事などを実施するという。 工事区間にある都電荒川線の停留場が鬼子母神前(きしぼじんまえ)。東京メトロ副都心線の「雑司が谷」駅の地上に位置する。停留場の西、ケヤキ並木の参道の先には、安産と子育ての神様として参拝者が絶えない国指定重要文化財「雑司ヶ谷鬼子母神堂」(鬼の字は1画目の“ツノ”がない)が建っている。北には東京音楽大学があって楽器を携えた学生の姿も目立つ。
都電荒川線で鬼子母神前の1つ隣が「都電雑司ヶ谷」の停留場。東側に雑司ケ谷霊園が広がる。夏目漱石、永井荷風といった文豪をはじめとする著名人が眠っており、墓参りに訪れる人も多い。この停留場手前で都電は東へ、道路とその地下の副都心線は北へと分かれることになる。 ■超高層ビルが増えた豊島区 環状第5の1号線は副都心線に沿っていく。グリーン大通りに合流する手前にそびえ建つのが高さ「としまエコミューゼタウン」。低層階は豊島区役所、上層階が分譲マンションの超高層ビルで外観デザインは隈研吾氏が担当した。
池袋駅の東側では1978年竣工の「サンシャイン60」が長くエリアのシンボルとなっていたが、2000年代に入り、「エアライズタワー」「アウルタワー」といったマンションを中心に超高層建築が目立つようになった。2023年9月にはサンシャインシティに隣接して東京国際大学池袋キャンパスが開校した。 都電荒川線は停留場の数が30で、JR山手線の駅の数と同じ。全区間の所要時間も約1時間と山手線1周とさほど変わらない。休日にふらっと出かけてみるにはぴったりの移動手段だ。久しぶりに都電に乗ってみたら、沿線の街並みの変化に驚くに違いない。
橋村 季真 :東洋経済 記者