まるで野球のホームランバッター!? 中島啓太のドライバースウィングをAIで分析
次にトップを見てみましょう。トップでは胸は右足の上に移動して、骨盤はその場で回りながらわずかに左に移動し始めています。胸がアドレスから左右にどれだけ移動したかを表す「CHEST SWAY」は、アドレスより-4.9㎝(右)に胸が移動していて、骨盤がアドレスから左右にどれだけ移動したかを表す「PELVIS SWAY」は、胸とは逆に0.7㎝(左)に動き始めているのがデータから見て取れます。 この胸と骨盤の左右差が大きくなることで、ダウンスウィングでクラブはよりインサイドから下りてきますので、例えばアマチュアゴルファーでドライバーのスライスやテンプラの傾向がある場合は、中島選手とは逆に胸が骨盤より左に動き過ぎているケースが多いので、参考にしてみてください。
続いてインパクトを見てみましょう。インパクトでは胸と骨盤の左右差がある中島選手ならではの特徴が2点あります。1つ目は胸の右側屈の角度(CHEST SIDE BEND)です。SPORTSBOX AI社が独自に調査した胸の右側屈角度のPGAツアープロのレンジ(範囲)は24.1°~37.5°に対して、中島選手は41°右への側屈が入っています。 この右側屈が大きい場合は、体の回転が止まってしまうとクラブがインサイドから入り過ぎてしまい、プッシュとチーピンが出やすくなりますが、中島選手は胸の回転(CHEST TURN)が38°(PGAツアーレンジは19.4°~37.6°)、骨盤の回転が45°(PGAツアーレンジは26.3°~43.7°)と、いずれもPGAツアーレンジを上回っています。この体の回転量を多くすることでクラブパスが過度なインサイドアウトになることなく、インサイドインかつ適正なプレーンでインパクトすることができるのです。 この中島選手の3つの特徴のうち、「胸の右側屈が大きい」を除く2つは、野球のホームランバッターにも見られる特徴です。中島選手と巨人の岡本和真選手のインパクト直前の写真を比べてみると、地面と空中のボール位置の違いで胸の右側屈角度こそ違いますが、(1)胸が骨盤より右にあるビハインド・ザ・ボール、(2)胸と骨盤の回転量が大きい点は共通していることが見て取れます。 もちろん野球のバットとゴルフクラブでは「フェース面」の有無に違いがあり、野球経験者がゴルフを始めた場合にはフェース面のコントロールが上手くできずにスライスに悩むケースがありますが、例えばグリップをストロンググリップで試してみたり、あるいは左手首の掌屈を入れるなど、フェースを開かずに面を一定にしたまま打つ手法はいくつもあります。 野球経験者で体の回転が速いタイプのゴルファーがその特徴を活かすには、アプローチの距離からフェース面のコントロールを意識して練習してみることです。短い距離のアプローチは野球でいう「ペッパー(トスバン)」のようなミートバッティングに近いのでフェース面の意識を持ちながら打てるドリルとしてお勧めです。余談ですが私も中学まで野球をやっていました。 2024年1回目のデータ解析は、中島啓太選手を分析させていただきました。今季は日本男子ツアー賞金王の資格でDPワールドツアーにも参戦予定の中島選手。昨年の久常涼選手に続く勝利を大いに期待したいところです!
北野達郎