<三浦翔平>振り切った演技で存在感 「才色兼備の自信家」見る影もなく “堕ちた貴公子”伊周の混乱と悲哀を体現
三浦さんは同シーンについて「すごく今まで由緒正しきというか、非常に優雅で美しい伊周としてやってきたのが、どんどん崩れていく序章です」と位置付けている。
◇女に「裏切られた」と泣きべそ バレバレのウソに“言い訳”
すでにこの時点で「貴公子」の仮面が剥(は)がれ落ちた伊周だったが、あることをきっかけに男としての「自信」を失ってしまう。
それは第19回「放たれた矢」(5月12日放送)でのこと。妾(しょう)である光子(竹内夢さん)の屋敷の前に、見事なしつらえの牛車が停(と)まってるのを目にしたからで、これを光子の“別の男のもの”と勘違いした伊周は「まさかあいつに裏切られるとは」と泣きべそをかくほどのショックを受けてしまう。
結局、ここでの“勘違い”から、弟の隆家(竜星涼さん)が、前の天皇の花山院(本郷奏多さん)に向かって矢を放つという大騒動へと発展。伊周には、隆家ともども厳しい処分が下ることに。
そして迎えた第21回。頭巾姿の伊周は「出家」を理由に任地に赴くことを拒むが、はなからウソはバレバレで、「これから剃髪するゆえ、任地には赴けぬ。帝にそうお伝えせよ」との必死の訴えも受け入れてもらえず、定子からも「兄上。この上は帝の命に速やかにお従いくださいませ」と見苦しさを指摘される始末。
伊周を捕らえに来た実資(秋山竜次さん)も「ただちに、大宰府に向け、ご出立を」と“幕引き”にかかるが、それでも伊周は「嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ!」と大の字で寝転がり、「行かぬ……」と駄々をこねまくり。また、大宰府への道中、母・貴子(板谷由夏さん)と引き離された際も「嫌だ! 俺は病気だ! 馬には乗れぬ!」と“言い訳”を繰り返した。
第21回では、「春はあけぼの」のフレーズがあまりにも有名な、「源氏物語」と並ぶ平安文学の傑作「枕草子」の誕生が描かれ、大いに話題となったが、その手前で決してかすむことのなかった“駄々っ子”伊周の存在感。三浦さんの振り切った演技なくして、成立しなかったように思える。