越前和紙産地に文化体験型の古民家ホテル開業準備 一般社団法人SOE、夏のオープン目指す 福井県越前市
産業観光による地域づくりに取り組む一般社団法人SOE(福井県鯖江市)が、越前和紙産地の福井県越前市岩本町で文化体験型の古民家ホテル「SUKU(すく)」の開業準備を進めている。工房見学やものづくり体験を案内するコンシェルジュが常駐し、産地に滞在しながら和紙文化を体感してもらう拠点とする。夏のオープンを目指している。 SOEは、丹南地域の伝統工芸産地の工房を開放するイベント「RENEW」の実行委員会事務局を法人化して2022年に発足。産業観光の通年展開を見据え、設立当初から宿泊施設の整備を目指してきた。工房が集中し歩いて巡りやすい越前和紙の産地で物件を探していた中、解体されようとしていた空き家の所有者と協議が整い、昨年10月に土地・建物を取得した。 かつて豪商が問屋を営んでいたという古民家は成願寺の正面に位置し、大正時代に建てられた母屋や築130年の蔵などで構成。一部を解体・減築して中庭を造るなどし、2棟に最大10人が宿泊できる施設(延べ床面積約180平方メートル)に改修する計画だ。 客室は3室を設け、それぞれ1階にリビングや浴室、2階に寝室を整備する。照明などインテリアの随所に越前和紙を取り入れるほか、旅先から和紙で手紙を書けるレターセットを置く予定。各部屋で提供する食事は、和紙の原料のコウゾを使ったくん製などのメニューを検討している。 施設名「SUKU」は、「漉(す)く」「宿(すく)」から名付けた。紙祖神の川上御前を祭る岡太神社・大瀧神社をはじめ、さまざまな種類の和紙を漉く各工房にも近く、常駐スタッフ2人がコンシェルジュを務め、見学や体験を案内する。素泊まりで1人1泊1万5千円から2万円を想定。観光客のほか伝統工芸に関心を向けるクリエーターらの利用を見込んでいる。 北陸新幹線県内開業に合わせた市の「越前和紙バレー創造事業」の一環。ターゲットに応じた3タイプの宿泊施設整備を和紙産地で目指す計画の第1弾で、県と市が今回、各1千万円を補助する。市は2月15日まで、ふるさと納税を活用したガバメントクラウドファンディングで整備費の支援を募っており、目標額500万円を上回る寄付が集まっている。 6月ごろのプレオープンを目指す。SOEの担当者は「これまでは産地に立ち寄っても、宿泊はほかの地域に流れてしまうケースが多かった。滞在して生活の中で和紙を体験してもらいたい」と開業後のエリア像を描いている。
福井新聞社