トム・ホランド版ピーター・パーカーの魅力は未熟さ?成長感じる映画「スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム」
マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)版「スパイダーマン」シリーズの完結作「スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム」がトム・ホランドにとって代表作となったことは間違いない。 【写真を見る】映画「スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム」より トム・ホランドが演じるスパイダーマンことピーター・パーカーはある種"未熟さ"が新たな魅力となっていた。 初代にあたる『スパイダーマン』シリーズのトビー・マグワイアはメガネをかけているカースト最下層に位置するようなパーカーで、逆にアンドリュー・ガーフィールド版の『アメイジング・スパイダーマン』シリーズでのパーカーは校内をスケボーで移動するようなイケている感も演出していた。 翻ってトム・ホランドのパーカーは、どちらにも偏っておらず、より等身大の高校生だ。「スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム」では、スパイダーマンの正体がピーター・パーカーだということが世界中に知れ渡ってしまったことで平穏な生活を送ることができなくなってしまう。親友ネッド(ジェイコブ・バタロ)やMJ(ゼンデイヤ)にも思わぬ影響を与え、落ち込みながらドクター・ストレンジ(ベネディクト・カンバーバッチ)に泣きつく様子などは、世の中の同年代と悩みのレベルは違えど親近感がある。 また、ビジュアル面でも過去のピーター・パーカーよりも幼さが強調されているのはトム・ホランドの容姿ゆえだろうか。その笑顔はチャーミングでありながら、その先に待ち受ける暗雲を全く予期できていないような危うさも持つ。実際、「スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム」ではいくつかの失点があり、自分や周囲の人間のために世界全体を危機にさらしてしまうという失態も犯す。 自らの行動で引き起こした事態に、悲しみや怒りなどあふれる感情を抑えられず涙する姿に痛いほど共感できるのは、パーカーの未熟さが若者なら誰にでもあるものとして皆が知っているからではないだろうか。 だが、そんな逆境をも乗り越えるのがヒーロー。しかも、今作に関してはこれまでのシリーズを演じてきた"スパイダーマンズ"が一同に会し、トム・ホランド演じるピーター・パーカーを励ますのだった。ともに次元が異なるピーター・パーカーであるため、時系列は存在しないのだが、実年齢が異なるため、まるで兄弟のようにも見える掛け合いで同じスパイダーマンとしての悩みを吐露する姿にはほっこりさせられる。 そんな物語の最大のハイライトは"スパイダーマンズ"による共闘だ。『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(2018年)や『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019年)で他のヒーローとともに戦うことはあったが、スパイダーマン同士で力を合わせるのはもちろん初。全く新しい共闘を経て、徐々にトム・ホランドのパーカーが精悍な顔つきになっていくのを見逃すことはできない。 そして最後には、本作開始前のピーター・パーカーであれば絶対にできなかったような決断を下す。自身の未来を大きく左右する決定を心に決めた際のトム・ホランドの表情からは未熟さが消え、我々視聴者は親心にも近い感情を持ちながら見守ることとなる。 今作で"トムホ版スパイダーマン"『ホーム』シリーズ三部作は完結。だが、スパイダーマンに深い愛情を持つトム・ホランドは今後もスパイダーマン作品への意欲を燃やしており、"第4弾"の発表もそう遠くない未来にありそうだ。「スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム」を経て、高校生から一人のヒーローとして確かな成長を遂げたトム・ホランドのスパイダーマンがどのような道を歩んでいくか今後も注目していきたい。 文=まっつ
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