『マル秘の密子さん』前社長・謙一を殺した“真犯人” 上杉柊平がかかった大きな魔法
「あなたが変われば、世界は変わる」と多くの人の背中を押してきた密子(福原遥)。だけど、その魔法の言葉はなりたい自分や夢がある人にしか効果を発揮しないのかもしれない。 【写真】坂東(黒羽麻璃央)を取り押さえる遥人(上杉柊平) 『マル秘の密子さん』(日本テレビ系)第7話では、九条開発の次期社長争いがついに決着。最もビジョンがはっきりしている候補者に軍配が上がった。前社長・謙一(神保悟志)が亡くなった夜、忘れ物を取りに部屋を訪れていた夏(松雪泰子)。警察による事情聴取はすぐに終わったが、会社で夏が謙一を殺したという噂が広まってしまう。このままでは次期社長の候補者から外されてしまうため、密子は夏の無実を証明すべく真犯人を探し始めるのだった。 真犯人を見つける鍵となったのは、謙一(神保悟志)がメモ代わりに使っていたボイスレコーダー。五十鈴(小柳ルミ子)の秘書クミ(玉田志織)の証言によると、遥人(上杉柊平)が夏の後に謙一の部屋を訪れており、もしかしたらその時の会話が録音されているかもしれない。遥人を犯人と疑う密子は、謙一の遺品が保管されている九条家の別荘に直行。そこで遥人と対峙し、あの夜に謙一から「お前だけは絶対に社長にするつもりはない」と宣言されて言い争ったことを聞き出す。 だが、謙一を殺したのは遥人ではなかった。ボイスレコーダーは夏が譲り受けた介護センターのロッカーに保管されている謙一の洋服のポケットに入っており、密子はその場所に犯人をおびき寄せるためワナを仕掛ける。密子たちの会話を盗聴し、ボイスレコーダーを盗みにきた“真犯人”。それは遥人の秘書・坂東(黒羽麻璃央)だった。 美樹(渡辺真起子)との不倫関係や、九条開発の情報をライバル社に横流ししていたことがバレて謙一を殺害した坂東。実のところ、ボイスレコーダーに犯行の様子は録音されていなかったが、坂東が罪を自白したことで事件は解決する。代わりに録音されていたのは、謙一の遥人や玲香(志田彩良)に対する思いだった。 生まれながらにして九条開発の社長となる宿命を背負った兄妹。特に遥人は美樹の期待を一身に背負っており、社長になる以外の選択肢はないに等しかった。ゆえに将来の夢を持てず、夏から社長になりたい理由を問われても答えられなかった遥人。謙一はそんな遥人を社長になる重圧から解放してあげたかったのだ。自身は「福祉の町を作る」という目標を持っていた謙一だが、それは彼が婿養子で、最初から運命が定められていたわけではないからだろう。だからこそ、伸び伸びと大きな夢を描くことができ、そんな謙一に遥人は憧れていた。 生きているうちにわかり合うことはできなかったが、「生きたいように生きろ」という謙一の愛に溢れた言葉が遥人に大きな魔法をかける。たしかに遥人には何か大きな夢があるわけではない。けれど、会社の未来を考え、社長になるため努力してきたのは事実だ。坂東が握っていた九条開発の不正やスキャンダルが世間に広まれば、社員が路頭に迷うと考えた遥人は密子に助けを求める。どんなに情けなくとも社員のために頭を下げられる遥人は、普段クールに決めている彼より余程かっこよかった。その姿こそ、遥人がなりたかった自分なのかもしれない。 密子は会社を愛していた姉・鞠子(泉里香)のためにも遥人の依頼を引き受けることを決意。経営陣を一新させ、夏を謙一の意志を継ぐ救世主に仕立てることで九条開発を窮地から救った。こうして九条開発の新社長の座についた夏。改めて平凡なシングルマザーだった頃の彼女と比べてみると、「外見が内面を変える」という密子の言葉通り、表情も凛々しくなってスタイリッシュなスーツ姿がすっかり板についている。 しかし、密子の本来の目的は彼女を社長にすることではなく、鞠子の死の真相を明らかにすることだ。坂東は謙一の殺害を認めたものの、半年前の火事については犯行を否認している。では、果たして誰が? 火事の日、自分に向かって懸命に助けを求める鞠子の姿を想起する夏の意味深な表情が気になるところだ。
苫とり子