ひどい皮膚炎で捨てられ、衰弱した柴犬。回復するまで献身した保護主が「別れを決めた」理由
種類もわからない状態で保護
東京、千葉、福島を中心に、動物の保護活動を行っている坂上知枝さん。2020年には、一般社団法人動物支援団体「ワタシニデキルコト」を立ち上げ、現在、シェルターを併設した動物病院の設立を準備している。本連載では、坂上さんに、これまで出会った保護犬猫とのエピソードを語ってもらう。 【写真】ひどい皮膚炎で犬種さえわからなかった保護犬”ふうちゃんの現在の様子 今回は、一般の保護主から相談があり、坂上さんが保護することになった、柴犬のメス犬、ふうちゃんの物語だ。 ふうちゃんが坂上さんのところにやってきたのは、2022年10月のこと。当時、推定8~9歳の女の子だ。 「やせ細って酷い皮膚の状態で衰弱して倒れていたところ保護されました。全身真っ黒で、毛もほとんど生えておらず、犬の種類もわからない状態だったそうですが、のちに最初の預かりさんが遺伝子検査をしたところ、100パーセント柴犬ということでした」 ダムのそばに捨てられていたのを、かわいそうに思った一般の人が保護したという。 「道行く人がおにぎりをあげたそうですが、目の前におにぎりを置かれても食べることができないくらい衰弱していたそうです」
犬猫の皮膚疾患の3割がアレルギーが原因
保護主が連れて行った病院では、「回復するのは難しい」と言われるほどに弱っていたが、保護主は周囲の人々と協力し、少しでも元気になってほしいとの思いから、アレルギー検査を受けさせる。その結果、数多くのアレルギーを持っていることがわかった。 そもそも犬にアレルギーがあることを知らない人も多いのではないだろうか。 「犬にもアレルギーがありますが、アレルギーの有無やアレルゲンの種類を調べるのは、病院に連れていき、検査をする必要があります」 主な症状は皮膚炎で、犬や猫の皮膚疾患の中で約3割以上がアレルギーによるものという説もあるほど。また、下痢等を引き起こすこともある。 犬がアレルギーを発症する原因は複数ある。食べ物や花粉、ハウスダスト、細菌、真菌(カビ)など、アレルギー反応を引き起こす物質であるアレルゲンが体に入り、免疫が過剰に働いてしまうのだ。アレルギーの発症には、生後間もない時期の環境などが関係しているケースがあったり、遺伝的にアレルギーを発症しやすい犬種もいると考えられているが、詳細なメカニズムは解明さされていない。 ふうちゃんの場合、草木やカビ、ハウスダスト、食物、昆虫など、検査項目92種類のうち、なんと30種類に陽性反応がでた。保護主が、アレルギー除去食を与え、室内で手厚く面倒をみたところ、「3カ月後にはだいぶ回復したそうです」。 しかし、保護主は、本来、室内で犬の飼育ができない家に住んでいた。ふうちゃんが衰弱していたので特例として認めてもらっていたのだ。元気になり、庭に出して飼うことにしたところ、皮膚炎がまた悪化してしまったという。 ふうちゃんは、イネ系の草にもアレルギーがあるのだが、保護主の家の周囲にはその草がたくさん生えていたのだ。 「困った保護主から、ワタデキに相談があったんです」