自分の気持ちに正直になっていく春田（田中圭）

　さらに牧は「相手のことを思うこと」が「相手の幸せを願うこと」でもあるということを理解している。元来、真面目で優しい春田は、長年自分のことを思い続け、その上で公私共にサポートしてくれる黒澤の健気さに触れ、気持ちが揺れ動いてしまう。また、春田の近くにはこちらも長年、春田のことが気になっているちず（内田理央）という幼なじみもいた。牧は春田が好きだからこそ、黒澤やちずの気持ちにも気がついていただろうし、春田と一緒にいられて幸せだが、人一倍「このままでいいのか」と葛藤を抱えていたはずだ。苦しい中で牧が下した決断には、今でも心が痛んでしまう。 　春田の行動は周囲に流されやすく、デリカシーにも欠けるため、時折ハラハラさせられるがゆっくりと確実に変化し、自分の気持ちに正直になっていく。最初の放送から放送から5年が経つが、本作のことを思い出そうとすると必ず、最終回の横断歩道が目に浮かぶ。春田と牧、そして黒澤。3人の関係性の全てがこの場面にぎゅっと集約されている。まだ観たことがない人はこれを機会にその感動を味わってほしいし、観たことがある人は、再び胸をいっぱいにしてほしい。 　この再放送後、1月5日からは、本作の続編『おっさんずラブ-リターンズ-』がスタートする。新作を楽しむためにもこの再放送は見逃せないものとなりそうだ。