CO2排出1・5倍、LNG4割増…再エネ普及しない40年度の「リスクシナリオ」公表
経済産業省は25日、中長期のエネルギー政策の指針「エネルギー基本計画」の原案に関し、2040年度に再生可能エネルギーなどの脱炭素技術が進展しない「リスクシナリオ」を示した。燃料の燃焼などに伴う二酸化炭素(CO2)排出量は、すでに公表済みのメインのシナリオの1・5倍に達する。火力発電に頼るため、液化天然ガス(LNG)はメインシナリオより最大4割多く必要になる。 経産省は25日の有識者会議でリスクシナリオを提示した。武藤容治経産相は「リスクに備えた現実的な対策が必要だ。エネルギーの安定供給が損なわれることは決してあってはならない」と強調した。原案は意見公募を経て、来年2月ごろの閣議決定を目指す。 リスクシナリオは再エネが拡大しないほか、燃焼時にCO2を出さない水素、アンモニアの燃料活用や、CO2を回収し地中に貯留する「CCS」技術が普及しないケースを想定する。 この場合、電源構成は再エネが3割半ば、原子力が約2割、火力が4割半ばとなる。メインシナリオでは再エネは4~5割程度、原子力は2割程度、火力は3~4割程度としている。 CO2排出量はメインシナリオの1・5倍となり、13年度比の排出削減割合はメインシナリオの70%程度から56%程度に落ち込む。 LNGはリスクシナリオで7400万トン程度が必要になる見通しだ。火力に頼る中で、CO2排出量の多い石炭火力よりも排出量の少ないLNG火力が重視され、メインシナリオに比べると2~4割多くなる。 LNGはアジアを中心に需要増が見込まれ、価格を抑えられる長期契約の必要性を指摘する声がある。経産省関係者は「LNGの長期契約の確保を含め、不確実性に備えつつエネルギー政策手段を準備しておくことが重要だ」としている。