「出世渇望する男性描く」清少納言の共感呼ぶ文才 「春はあけぼの」だけではない日常描いた文章
今年の大河ドラマ『光る君へ』は、紫式部が主人公。主役を吉高由里子さんが務めています。今回は現代人でも共感を抱く、日々の景色を描いた、清少納言の文才を紹介します。 著者フォローをすると、連載の新しい記事が公開されたときにお知らせメールが届きます。 【写真】清少納言。大河ドラマではファーストサマーウイカさんが演じる。 ■清少納言を猛烈批判した紫式部 平安時代中期の『源氏物語』の作者・紫式部は、同時代に生きた女性歌人の清少納言を自身の日記の中で批判していました。 清少納言の性格を「得意顔でとんでもない人だったようですね」と非難し、作品や能力を「利巧ぶって漢字を書き散らしている」「学識がまだまだ足りない」などと、強い言葉が並べられています。
しかし、清少納言が書いた随筆『枕草子』は、紫式部の『源氏物語』と並び、今も教科書などで取り上げられるほど有名で人気の作品です。 『枕草子』の冒頭は、学校の古典の授業で大半の人は習ったはずです。 「春はあけぼの。やうやう白くなりゆく山ぎは、すこし明りて……」。この一文を暗誦できる人も多いのではないでしょうか。 とはいえ、学校の古典の授業では、『枕草子』だけに限らず、書かれている一節をサラサラと読んで、教師が中身を解説し、それを何周か繰り返したうえで、「はい、では次の作品を学びましょう」となってしまうことが大半だったと思われます。
それでは、作品の全体像はわかりませんし、「あの頃、枕草子の一文を覚えさせられたな」くらいしか記憶に残らないでしょう。先人が記した貴重な作品を味わうことなく、人生をすごしてしまうのは、もったいないことです。 『枕草子』には、一体、何が書かれているのかを探っていきたいと思います。 同書の冒頭は先ほど記したように、「春は曙。ようやく辺りも白んでゆくうち、山の上の空がほんのり明るくなって、紫がかった雲の細くたなびいた風情」とあります。
続いて「夏は夜。月のある頃はもちろん、月のない闇夜でも、やはり、蛍が沢山、乱れ飛んでいる風情。また、ほんの1つか2つ、ほのかに光って飛んでゆくのも、趣がある。雨が降るのも、趣がある」。 そして「秋は夕暮、雁などが列を作り、小さく小さく空の遥かを渡っていくのは、とても趣がある」。 最後に、「冬は早朝、霜が真っ白におりているのも、またそうでなくても、とても寒い朝、火を早急に起こし、炭を御殿から御殿に運んでいくのも、冬の朝の光景として、相応しい」。