ギャル芸人「エルフ荒川」は裏切らない…ギャルタレントブームの「最終兵器」と呼ばれる理由
派手な金髪とメイク
ここ数年のテレビバラエティ界ではギャルタレントの活躍が際立っている。池田美優(みちょぱ)、生見愛瑠(めるる)、古川優奈(ゆうちゃみ)といった顔ぶれが毎日のようにテレビに顔を出している。 【写真】「誰かわからんかった」「肌ツルツル」…驚きの“すっぴん”を披露したエルフ荒川
ギャルがテレビで重宝される理由は、テレビが瞬間を切り取るメディアだからだ。一分一秒単位の視聴率競争をしているため、出演者はじっくり長い時間をかけて話をするわけにはいかない。 その点、ギャルは見た目が派手なので、その人のキャラクターがひと目で伝わりやすい。さらに、ギャルならば明るくノリが良くて本音を言ってくれそう、というイメージもあるので、視聴者にもすんなり受け入れてもらえる。 しかも、「実は賢い」「実は真面目」というふうにギャルのイメージを覆すような言動をしても、それはそれで面白く見えるという効果もある。 さらに言えば、今のテレビは若い世代の視聴者を何とか取り込もうとしているため、同じ若者代表としてギャルが求められることも多い。若いタレントと年配のタレントがいれば、対立構造を作ってお手軽に場を盛り上げることもできる。 そんなギャルタレントの新星として注目されているのが、お笑いコンビ・エルフの荒川だ。派手な金髪とメイクがトレードマークの生粋のギャル芸人。地味な外見の相方のはると好対照を成している。 今ではピーチ・ジョンのモデルに抜擢されたり、コスメブランド「GALLZ Cosmetics」のプロデュースを行ったり、さまざまな仕事をこなしている。 荒川の強みは、万人が思い描くギャル像を裏切らない、圧倒的な明るさと前向きさだ。前述の通り、ギャルタレントの中には、ギャルのイメージをあえて裏切って賢い部分を見せたりする人もいるのだが、荒川はいつでも全力投球の真っ向勝負。ギャルの中のギャルとして振る舞ってくれるので、テレビのスタッフにとっては扱いやすくありがたい存在だ。
ネタの面白さにも定評
しかも、ギャル系のモデルなどとは違って、芸人としての基礎体力も備わっているので、要所要所で笑いを取ることもできる。「明るく楽しい」に「面白い」の要素が加わっている。 若手お笑いシーンでは、キャラクターが強い芸人は色眼鏡で見られやすいところもあるのだが、エルフはネタの面白さにも定評がある。2023年の「女芸人No.1決定戦 THE W」では準優勝という結果を残した。荒川のギャルのキャラクターをネタの中に無理のない形で取り込んでいるところに職人的な技術を感じる。 バラエティの世界では、その場の空気を変える「突破力」のある明るいキャラクターには一定の需要がある。芸人として空気を読みつつ明るく楽しいふるまいができる荒川は、その役割をまっとうできる頼もしい存在だ。 キャラ芸人と言われるような人は、そのキャラを生かして世に出た後は、それをいつまでやっていくのか、いつになったら捨てるのか、といった選択を迫られる。でも、今のところは荒川がギャルを脱却する必要は感じられない。 彼女にとってギャルとは「ファッション」である以上に「生き様」のことだからだ。ポジティブなオーラを発する生き方を貫く荒川は、ギャルタレントブームの最終兵器である。 ラリー遠田 1979年、愛知県名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、作家・ライター、お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など多岐にわたる活動を行っている。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務めた。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり 〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『逆襲する山里亮太』(双葉社)『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)など著書多数。 デイリー新潮編集部
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