高橋一生、オファーに「“うれしい”と“どうしたものか”が同時に…」<ブラック・ジャック>
高橋一生主演のテレビ朝日ドラマプレミアム「ブラック・ジャック」(夜9:00-10:54、テレビ朝日系)が6月30日(日)に放送される。 【写真】高橋一生演じるブラック・ジャックと、永尾柚乃演じるピノコ 同作は、連載50周年記念を迎えた手塚治虫の名作医療漫画を24年ぶりにドラマ化。法外な治療費と引き換えに、どんな手術も成功させる無免許の天才外科医ブラック・ジャックが、コロナ禍を経て、医療の在り方がふたたび問われる令和の時代にセンセーショナルによみがえる。放送を前に高橋が囲み取材に応じ、撮影裏のエピソードやこだわりを語った。 ■ブラック・ジャックとの出会いは小学3~4年生「異形の存在として映っていた」 ――「ブラック・ジャック」という作品、キャラクターにどんな印象をお持ちでしたか? あまり本質的なことを多く語らない人なのかなとは思います。ど真ん中のことを言わないけれど、人に対してとても愛情の深い人間だなと思っていました。 作品については、医療と職業を通して人間ドラマの礎を築いた一つの漫画ではないかと思っています。 ――高橋さんが漫画「ブラック・ジャック」に触れたのは何歳頃でしたか? そのとき受けた印象も覚えていれば教えてください。 小学校3~4年生だったと思います。ブラック・ジャックがとても怖かったような記憶はありました。一体何を考えてるか分からないというか。 (医療行為を)多くの人たちが言う「正義」のためにやってるのか、「自分の正義」のためにやってるのかよく分からないという(彼自身の)存在や、顔が継ぎはぎなことなど、「異形の存在」として映っていたと思います。 なので、お芝居をするときも、そういうイメージを持って演じていたように思います。 ドラマ冒頭のシーンで子供を助けるシーンがあったんですけれど、その子役の方が泣いてしまったんです。「(本当に)腕を落とされるんじゃないか」とすごく怖かったみたいで。「ごめんなさい」と言いながらも、僕が子供の頃に感じた怖い存在になれているんだと思いました。 ――「ブラック・ジャック」は一筋縄ではいかないストーリー、ビターなエンディングという印象がありますが、その点についてはいかがでしょう? 手塚さんの「人間に対する愛」のようなものが丁寧に描かれているんじゃないかなと感じます。 必ずしも多くの人が「みんな上手くハッピーエンドになった」と捉えられない話も多くありますけれど、人の「業」のようなものも含めて描いていたのではないかなと思います。 ■「正直“うれしい”と“どうしたものか”が同時に来ていたような気が」 ――今回のブラック・ジャックという役をもらった時の感想を教えてください。 僕にはもう一人、大切な岸辺露伴先生という漫画家の「先生」がいるんです。なので、「別の先生」と言われたときはとてもうれしかったんです、「ブラック・ジャック」もとても好きな漫画ではあったので。 ただ、(高橋一生という)同じ肉体を通して演じることで、どうしても見る方々に「岸辺露伴だ」と思われてしまうかもしれないという思いはあったので、正直“うれしい”と“どうしたものか”が同時に来ていたような気がします。 ――多くの人が知っている作品、キャラクターを演じるということに対して「怖さ」のようなものはありましたか? その部分に関してはないんですけれど、単純にその差異が見えてしまったり、職業が違っても先生同士なので自分の中で区分けできるだろうかという感覚はあったかもしれません。 ――今回のオファーを受ける際や演じる際に、高橋さんから何か提案したことやお願いしたことはありますか? 原作に準拠している形であってほしいということです。 「ブラック・ジャック」が好きな方々が感じているブラック・ジャック像のようなものを平均化して自分の中に落とし込み、かつ自分が思っているブラック・ジャック像をどう上手く混ぜられるかということは、芝居をしながら考えていたところでした。 僕は、撮影のときモニターを見ないんです。カットがかかった後に自分の芝居を見るのが恥ずかしくて、毎回自分の芝居に「クソッタレ!」と思うので見ないようにしていて。なので、どういうアングルでどのように撮られているか分からないんです。 ただ、やっぱり「こういう見え方をした方がいい」ということはお伝えしました。高橋一生が、ではなくブラック・ジャックがいかにかっこ良く見えるか。今回はビジュアルも相まって、どうしたら服の機能やこの異形の感じを生かせるかを考えていたので、普段はあまり言わないのですが、珍しく言わせていただきました。 ■「ピノコはとても仲良くしてくれました」 ――今作でピノコを演じられた永尾柚乃さんとはどのように役作りをされていったのでしょうか? ピノコはとても仲良くしてくれました。お芝居しやすかったです。僕と同じで妖怪が好きだったので、妖怪トークで盛り上がりました。僕も袖の下で妖怪の本を差し上げたりして、だいぶ機嫌良く過ごしてくださったんじゃないかなと思っています。 ――改めて、ブラック・ジャックを演じてみてのご感想はいかがでしたか? 不思議と手応えがないんです。まだ(完成版を)見られていないので、どのように出来上がるのかが分からないのですが、楽しみではあります。 ――今後もブラック・ジャックを演じていきたいですか? 今後があるかどうかは、僕はいつも考えないようにしています。関係者の方々が「やりたい」と言われたら「へえ」と応えますし、何となくそれには触れないなと思ったら、「もうやらないんだな」と思うことにしてます。 そこに一喜一憂していたくないんです。そのときそのときのお芝居をしっかりやっているので、手応えはなくても「やり切った」ということだけは確かに存在していて。なのでその部分に関しては、僕はあまり考えないようにしています。「あったらいいな」はありますけれど。どの役にしても「できれば寅さんみたいに(長く演じたい)」という思いはあるんです。 俳優は消費の対象なので、ずっと続けられる役があると、ちょっと面白くなったりするんです。それが「ブラック・ジャック」にもあってほしいなと思う反面、それはいろいろな事情があることなので分からないですが、今は割とフラットに捉えています。 ※手塚治虫の「塚」、正しくは「点あり」