「アール・ブリュット」の数々 就労継続支援施設「ほ・だあちゃ」(青森市) 15日まで開所12年作品展
青森県内における「アール・ブリュット(生の芸術)」の紹介に先駆的な役割を果たしてきた青森市石江の就労継続支援B型「ほ・だあちゃ」が開所から12年を迎え、利用者27人の作品を紹介する展示会が同施設で開かれている。会場を埋め尽くす、一つとして同じではない作品が放つのは「今、ここに生きている」という無条件の肯定のメッセージだ。 テーマは「愛 Need カノア」。愛(I)は英語で「私」、Needは「必要」、カノアはハワイの言葉で「自由」を意味する。10周年で実施する予定だったがコロナ禍で延期していた。 ほ・だあちゃは2013年、創作活動を行う工房とカフェを備え開所した。知的障がいや精神障がい、発達障がいを抱える利用者が、自分のペースで創作しながら社会とのつながりを構築していくことを目指してきた。表現方法だけでなく、活動時間や場所も制限しない。このことは利用者の心を落ち着かせることにつながっているという。 こうして生まれた作品は、専門教育を受けていない人が生み出す「アール・ブリュット」の分野で全国的に評価されており、今恵美子さん、鈴木麻里さんが手がけた作品は全国規模の展覧会で入賞。今さんは県外の展覧会に招かれるなどアーティストとして活動の場を広げている。また、19年に商品化したランプシェード「ような」は利用者が地元企業と共同制作。20年、パリで開かれたインテリアの国際展示会で高く評価された。 「事業所で行う単純作業よりも、創作活動に重点を置くことで一人一人の個性が浮き上がってきた」。同所を運営するNPO法人「ドアドアらうんど・青森」の佐藤智子理事長(81)は語る。「障がい者」というくくりではなく「表現する人」として捉えることで通底するものが見えるはず-との思いは開所当時から揺るがない。 展示会では、利用者全員の「表現」を披露する。兼田紗杏さん(26)は、気になる言葉や自身の心象を妖怪に重ねた作品を描き続けてきた。カラフルな手が頭や胴から伸びている「かまってようかい」は、大好きな支援員とあまり話せなかった日の気持ちをそのまま現したという。お菓子やぬいぐるみ、洋服など好きなものをちりばめたポップ感あふれる1枚を出品した鈴木さん(40)は「ほ・だあちゃで絵に出合ってから、自分を受け入れられるようになりました」と語る。 佐藤理事長は「誰にでも自由は必要で表現にも欠かせないと思う。言葉ではうまく伝えられないけれど、私はここにいる、そしてあなたもここにいる-という思いが作品には込められています」と話していた。 ▽15日まで、午前10時~午後3時。問い合わせは「ドアドアらうんど・青森」(電話017-766-1320)。