「自分だけポスターから排除」 ハリウッド出演俳優・松崎悠希語る“アジア人軽視” 「怒っていい。教えないと気づかない」
さらに、“日本人はこうあるべき”というステレオタイプも経験したそうだ。「ハリウッドの日本人役のキャスティングを手伝ったが、ミックスルーツの人はオーディションに呼ばなかったり、応募があっても書類選考で落としたり、全員除外される。彼らが求めている“日本人像”に当てはまらないからだ。“ハリウッドは多様でインクルーシブな世界だ”と描きたい一方で、他の国には一元的な、人種的にも多様性が一切ない姿を描きたくなる」。
■意図しない差別も積み重ねに 松崎氏「怒っていい」
思い込みや偏見によって無自覚に相手を傷つけることを「マイクロアグレッション(小さな攻撃)」という。その中には、外国人や海外ルーツの日本人に対する「日本語ペラペラですね」「日本人より日本人らしい」なども含まれる。 渡辺氏は「ほとんどの差別は意図のある・なしに関係なく起こる。“気にしすぎだよ”という言葉は言う側のもので、受けてきた側は気にしてしまう。ロバート・ダウニー・Jrさんの行為も、意図していたかどうかは別として、やはりアジア系俳優を明らかに軽視したふるまいには見える。自分がどう見られるか、に対する知見は持つべきだった」との見方を示す。
また、マイクロアグレッションは「いきなり人を殺したりしない。水がコップの中に溜まっていくようなもの」だとし、「“日本語上手だね。どこから来たの?”と毎日聞かれると、“自分はやっぱりよそ者なんだな”という感覚になり、自己肯定感を失っていく。それを取り戻す方法も同じで、1滴1滴積み重ねていくことだ。差別や偏見をなくすには、自分がかけているサングラスはすべてが見えている普遍的なものなのか?と時々外してみること。そして、“あのふるまいはダメだ”と教えてくれる他者がいるかどうか。自分が身の回りに対等で平等な関係性を持っていないと、そういった人は出てこない」と述べた。 松崎氏が製作・脚本・出演する『MOSAIC STREET - Proof of Concept Scene』という映画がある。「個人で作り、XやYouTubeで無料で公開している。主人公は全員日本人で、全員がマイノリティだが、それはストーリーに一切影響を与えず、見終わった後に気づくようになっている。こういうドラマが日本から生まれるようになると、見ている人たちもマイノリティであることを特別視しないようになる。つまり人種的に多様であっても驚かなくなる」と意図を明かす。 また、アジア人軽視の実態を発信する活動を通して、「ここ2年くらいでようやく、ハリウッドが描く日本人像に少し多様化が生まれてきている」と感じているそうだ。 そうした中で思うのが「怒っていい」ということだという。「まずは、“そこに問題がある”とわかることが1つ。もう1つ、特に日本人はなめられている。ハリウッドの超大物プロデューサーが“中国や韓国市場は描写に気をつけたほうがいい。でも、日本は文句言わないしボイコットしないし、映画の売上に影響しないからあまり配慮する必要はないね”と言っていたりする。それは怒ってよくて、“これはおかしい”と教えてあげないとハリウッドは絶対に気づかない」と主張した。(『ABEMA Prime』より)