第1世代の4ドアは初代ウルトラマンの科学特捜隊車両 ヤフオクで見つけたやれたシボレー・コルヴェア(第2世代)をホビー系編集者のオーナーが見事にレストア!
ポルシェもびっくりの空冷フラット6のリアドライブ!
模型やミニカー、スロットカーのみならず、アメリカン・カルチャーや音楽などにも造詣の深い編集者の山田剛久さんが、デューン・バギーと共に愛するのは、空冷フラット6をリアに搭載するRRレイアウトをもつ、異色の’60sアメリカン・クーペだった。 【写真29枚】空冷水平対向6気筒エンジンをリアに積んだポルシェもびっくりのシボレー・コルヴェア ビカビカのボディと内装を写真でじっくり見る ◆フラット6でリア・ドライブ シボレー・コルヴェア・モンツァ・スポーツクーペと聞いてパッとその姿を思い浮かべる貴方は、相当ディープなエンスーだ。 コルヴェアは1960年にGMが送り出したコンパクトカーである。その最大の特徴は新規開発の空冷水平対向6気筒OHVエンジンをリアに搭載するRRレイアウトを採用したこと。その成り立ちから“プアマンズ・ポルシェ”と言われることもあるが、4ドア・サルーンからスタートし、2ドア・クーペ、コンバーチブル、4ドア・ステーション・ワゴン、さらにキャブオーバー・スタイルのトラックやミニバンと、ファミリーを拡大していったことからもお分かりの通り、当時北米市場で猛威を奮っていたフォルクスワーゲン・ビートルへの対抗馬というべきモデルであった。中でもモンツァは60年に追加された、左右独立のシート、デラックス・トリムを備えたスポーティーな上級グレードだ。 その後コルヴェアは65年にリア・サスペンションをセミトレーリング・アームへと改良し、ボディ・デザインを一新した第2世代へと進化。69年までにシリーズ合計で183万台以上が製造された。 ホビー系の編集者、ライターとして活躍する山田剛久さんのコルヴェアは69年型のモンツァ・スポーツクーペ。聞けば68年以降のコルヴェアは2ドアモデルのみで、68年後半から69年前半まで製造された69年モデルは、たった6000台ほどしか作られなかったレア・モデルなのだそうだ。 「第2世代ってフロントの尖った感じとか、GMが開発に深く関与したシャパラルのレーシングカーや、ショーカーのコルヴェア・モンツァGTと同じ系統のデザインをしているんです。あとベーシックだった第1世代と違って、第2世代からはマスタングのようなインターミディエイトなスペシャリティーカーになった。そういうところも好きですね」 ◆クルマはホイールが大事 山田さんは1962年、富山県生まれ。もちろん子供の頃からクルマが好きだった。 「近所の修理工場でもらったタイヤや、落ちていたホイール・キャップを転がして遊んだり、デパートでマッチボックスのミニカーを買ってもらったり。その頃好きだったのはビートルとタイプ2。鉄のホイールにキャップがついた、あの佇まいが好きだった。あとミニカーで魅力的だったのはテクノのジャガーEタイプ。それにイマイのラジコンのアストン・マーティンDB5も死ぬほど欲しかったなぁ」 その後プラモデルやスロットカーに目覚め、レースにも興味を持つようになった山田さんだが、実車を買うのは意外と遅く、社会人になってからだった。 「音楽とか他にも色々興味があって、クルマからちょっと離れた時期があったんです。そして社会人になり、結婚してクルマを買おうと思っても新車で欲しいものがない。そこで読んでいた雑誌に感化されて72年型のいすゞベレット1800GTを買ったんです。同時にLSのプラモデルをワークスカーに改造したりしながらね。根が子供だから、今も昔も常に実車と模型がリンクしてるんですよ(笑)」 そしてお子さんが生まれたのを機にグリーンのいすゞジェミニ・ハンドリング・バイ・ロータスを購入。今でも手放したのを後悔するほど気に入っていた。 「でもある日、首都高を走っていたらアルファロメオ75にズバーッと抜かれたんです。ガラスが青くて、ホイールもOZみたいなデザインでカッコよくてね。“これは欲しい!”と75ツインスパークを買いました。15年ほど乗って、最後の方は苦労だらけだったけど、すごく面白かった。ダメなところはいっぱいあるけど、なんかすごく良いんですよね(笑)」 ◆乗りたいクルマに乗る 75のあと、山田さんはクリス・バングルのデザインが好きで、BMW1シリーズを3台も乗り継いだ。 「めちゃめちゃ安心感があって、それはそれで素晴らしかったけど、気づけば55歳になっていた。そこで自分が本当に乗りたいクルマに乗ろうという気持ちになり、自分に正直に、心の奥底を覗いたら“デューン・バギーが欲しい”という答えに行き着いた。その原点はタミヤの1/18のプラモデルですね」 そこで山田さんは2017年にアメリカでレストア・ベースのメイヤーズ・マンクスを見つけて輸入。1年かけてレストアした。ところが運良くというか、悪くというか、マンクスを買った直後、山田さんはコルヴェアにも出会うことになる。 「突如ヤフオクで売りに出たんです。実はこのクルマが97年に日本に輸入された時にある雑誌で僕が取材しているんですよ。新車同様の素晴らしいコンディションでね。でもその後はイベントなど公の場で姿を見せることもなく“あのクルマどうしたんだろう?”と思っていた矢先だった。模型趣味的にも60年代のアメ車の中で第2世代の2ドアの形が一番好きで、買うならあの個体!と密かに思っていたので……」 しかもそのオーナーが、山田さんが懇意にしているスペシャルショップのお客さんだったことも後押しになり、購入を決意。ところが長く屋外で保管されていたのか、お世辞にも良い状態ではなかったという。 「20年前はすべてオリジナル・ペイントだったけど、補修されたらしく残っていたのは6割くらい。ボディの一部に穴も開いていたし、内装もダッシュボードは割れているし、シート裏も傷だらけで……」 そこで山田さんは件のスペシャルショップに預け、外装、機関から内装など、ほとんどに手を入れた。そのおかげで今では再び新車のようなコンディションを取り戻している。 「良いクルマですよ。2段ATでスポーツカーというよりクルーザー的だけど、寒い時期にしっかりと着込んで、窓を全部下ろして第三京浜を走ったりするとすごく気持ちがいい。確かにエンジンは熱ダレするし、オイル漏れも気になるけど、維持する秘訣は“クルマに潰されない”ように、あまり細かいことを思い詰めないことですかね(笑)」 文=藤原よしお 写真=望月浩彦 (ENGINE2024年6月号)
ENGINE編集部
【関連記事】
- ジャガーEタイプとともに人生を歩んできたオーナーが、なぜ初代日産シルビアを手にすることになったのか? 素晴らしいクルマには必ず情熱的なストーリーがある!
- そんなに好きならと店主が秘蔵のフェラーリ・ディーノ246GTを譲ってくれた嘘のようなホントの話 想いを貫いていたらチャンスが巡ってきた!
- 清水草一が乗るちょっと古いクルマ、フェラーリ328 GTS(1989年型) もう速さには意味はない? おれのロマンはここにある!
- 「今はこんなデザイン、絶対できない!」 細いピラーが超絶美しいBMW 3.0CSi (1974年型) 【あなたのちょっと古いクルマ見せてください! その1】
- 売れっ子スタイリストが愛してやまないヒストリック・シトロエン! SMがもたらしてくれる素晴らしき喜びの世界!!