「トクリュウ」が制度を悪用!中国人「免税品転売グループ」の狡猾な手口を超接近リポート
消費税免税制度を悪用する中国人「免税品転売グループ」
新宿駅西口付近の路上に停められた、埼玉県川口ナンバーの白いバン。そこに、中古ブランド品販売店の紙袋を抱えたアラフォー女性が周囲を気にしながら小走りで近づいてきた。女性はバンの中に座っていた男性に紙袋を渡すと、引き換えに紙幣を受け取った。 【画像】転売ヤーの車に"買い子"が出たり入ったり…衝撃の「現場写真」 トランプのカードを切るような手付きで一万円札4枚と千円札7枚を2度確認すると小脇に抱えていたバッグの奥に仕舞い込み、女性は足早にその場を去った(3~5枚目の写真参照)。その数秒後、今度は20代と思(おぼ)しき男性が家電量販店の紙袋を携えてバンへ近づいてきた。彼もやはり男に紙袋を渡すと、紙幣を受け取り、その場を後にするのだった――。 彼らの正体は日本の消費税免税制度を悪用する中国人「免税品転売グループ」だ。11月18日に『転売ヤー 闇の経済学』(新潮新書)を上梓した筆者が目撃したのは、彼らの「仕入れ」現場だった。 免税制度とは、国内非居住者(外国人観光客や日本人の一時帰国者)が対象の商品を購入した際に消費税が免除される制度。転売目的や国内で使用するための商品購入は、免税の対象外とされている。 しかし現行の制度では、免税品として購入された商品が購入者自身によって国外に持ち出されているかどうかのチェックは、出国者全員に対しては行われない。このスキを悪用し、訪日客らの名義を使って商品を免税購入することで、転売用の商材を消費税の10%分安く仕入れるというのが、彼らの手口だ。 転売ヤーの暗躍により、販売側の責任が追及される事例も多発している。今年4月、転売の疑いがある客に繰り返し免税販売を行ったとして、東京国税局から中古品買い取り販売大手の大黒屋が2億3000万円の追徴課税をされたことが判明した。 日本政府も手をこまねいているばかりではない。不正が横行していることを踏まえ、令和6年度税制改正の大綱には店頭で免税を行わず、出国時に商品持ち出しを確認のうえ、消費税分の払い戻しを行う「リファンド型」に免税制度を移行させることが明記された。 ところが免税品転売ヤー集団もさるもの。早ければ来年度中と見込まれるリファンド型への移行を前に、駆け込み的に「免税品爆買い」を行っているのだ。 ◆複数の男女が次々と…… 中国のSNS上には転売ヤーが免税品購入の「買い子」を募集する書き込みが散見される。日本で問題となっているトクリュウ(匿名・流動型犯罪グループ)と同じ構図だ。その中に「観光ビザ、短期滞在者募集。免税品の購入代行。報酬2万円以上」という書き込みを発見した。 筆者は訪日中国人を装い、投稿者にメッセージを送ってみた。その後、先方とのやり取りにより「仕入れ」の集合場所と日時を聞き出すことに成功。そして仕入れ当日、集合場所の新宿駅西口付近で目撃したのが冒頭のシーンだった。 前述のアラフォー女性を追ってみると、歩いて5分ほどの距離にある別の中古ブランド品販売店に入店。15分ほどで両手に紙袋を抱えて出てきた。 店の外には筆者以外にも、彼女の動きを目で追う男がいることに気が付いた。買い子らが金や商品を持ち逃げしないよう、見張っているようだ。先ほど、バンに乗った男から受け取った紙幣は買い子の報酬としては高額すぎる。おそらく新たな商品の購入資金として渡されたものだろう。彼女は紙袋を携え、例のバンに戻ってきた。再び紙幣を手にすると、また足早に去った。 しばらく見ていると、バンには彼女を含め、複数の男女が5~10分ごとにやって来ては、バンの中の男性らにブランド品販売店や家電量販店の紙袋を手渡していった。その様子はまるで、女王蜂のために巣にせっせとミツを運び続ける働き蜂のようだ。彼らの足取りから、罪の意識は希薄なように感じた。 取材で出会った中国人転売ヤー集団の一人が、得意げに明かす。 「最近は転売ヤーが中古品販売業者に″内通者″を従業員として送り込むこともあります。中国語対応ができる店員は限定されるため、協力者が接客を担当すれば、転売ヤーは免税資格のある買い子を雇わずに免税制度を使えるからです」 再び中国のSNSで検索すると、「あなたの代理として免税品を買えます」といった文章とともに、彼らが不当に手に入れた「戦利品」の買い手を募集する投稿が山ほど出てきた。 法の抜け穴をかいくぐる転売ヤーたちの狡猾さには呆れるばかりだ。しかし、転売市場に買い手がいる限り、彼らが消えないのも事実なのだろう。 『FRIDAY』2024年12月6日号より 取材・文:奥窪優木(ジャーナリスト)
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