「小指を噛んだ」重要なダイイングメッセージ…小川真由美と山本陽子に対比の妙 「八つ墓村」(1977年)
【日本美女目録 山本陽子という女優】 今日は「八つ墓村」(1977年、野村芳太郎監督)でこわ~い役を演じた山本陽子を見ることにしよう。 【写真】芦川よしみ、姉のように慕う山本陽子さんとのツーショット写真(2016年撮影) テレビのCMで「タタリじゃ~!」というのを記憶している方も多いだろう。日本中の子供が口にしたはずだ。ドリフターズがコントにも取り入れたほど人気になったキャッチコピーだ。 原作はご存じ横溝正史のベストセラー小説。まず68年、この推理小説が「週刊少年マガジン」でマンガになると大人気に。これに目を付けた角川書店が横溝作品を次々に刊行すると、角川と東宝が映画化に動き出し次々と版権を獲得していった。 ところが野村芳太郎の息子・芳樹は個人的に横溝と親しく、「八つ墓村」の映画化権はすでに手にしていたのだ。 というわけで、東宝は76年に「犬神家の一族」を市川崑監督、石坂浩二=金田一耕助で制作し、空前の大ヒットを記録。以後も「悪魔の手毬唄」「獄門島」と続く。 一方「八つ墓村」は角川と松竹の意見が対立し、松竹が単独で制作することに。だから金田一もハカマ姿ではなく、東宝との違いを前面に出してミステリーというよりホラー色が強くなっている。特に山﨑努が村人を惨殺するシーンは目を覆う出来となった。 山本は辰弥(萩原健一)の異母姉の多治見家の春代という役。生誕の秘密を辰弥に教える。子宮筋腫のため離縁され、多治見家に出戻っており、やがて事件のキーマンとなる。 一連の事件の犯人と誤解され、村人に襲われた辰弥を近くの鍾乳洞にかくまうことに。しかし食事を届けに行く途中、何者かに襲われ殺されてしまう。そして死に際に彼女は重要なダイイングメッセージを残した。 「犯人は誰だか分からなかったが、相手の小指を噛んだ」と辰弥の腕の中でそう伝え、息絶える。これが決め手となって犯人が分かることになるが、ファンは口をそろえて匂い立つ美しさの小川真由美と、そそとしたたたずまいの山本陽子に目を奪われたと語ったものだ。対比の妙か。これは衆目の一致するところだろう。 それにしてもこの映画の配役は実にぜいたくだ。主役だって渥美清の金田一ではなく萩原なのだから。それだけ山本と小川のシーンが光る。 =敬称略