米山隆一氏、妻の室井佑月さんと個性発揮「米山・室井党」で集票 県知事経験者2人と元民主の自民候補が争った混迷の新潟4区制す
まばらな聴衆に、買い物客が一人、また一人と加わる。多い時には100人規模にも膨れ上がった。長岡市中心部のスーパー前。立憲民主党の米山隆一(57)がマイクを握り、妻で作家の室井佑月が笑顔で握手をして回る。「動員がなくても、多くの人が集まり聞いてくれる」。衆院選終盤、街頭演説は勢いを増し、陣営は手応えを感じた。 【表】衆院選新潟4区の得票結果 前回は無所属で事実上の野党統一候補として旧5区を制した米山は今回、立民公認となった。共産党が組織的な支援をせず、立民独自の組織もない中、当初はビラの配布にも苦労した。支えたのは社民党関係者だった。 陣営は選挙戦で立民の政党色をあえて出さず、政策に強い本人の個性を生かす戦略を取った。米山は街頭で自民党派閥の裏金事件を批判しつつ、物価高など自公政権の課題も生活者目線で指摘。東京電力柏崎刈羽原発の再稼働問題は是非ではなく、県民投票というプロセスを重要視するなど間口を広げた。 前知事だったことや、 交流サイト(SNS)による発信で知名度は抜群。女性にファンが多い室井も毎回マイクを持ち、有権者の関心を呼び込んだ。陣営幹部は「立憲民主というより、米山・室井党で票を集めた」と総括してみせる。 ◆鷲尾氏、新エリアで浸透し切れず 選挙戦中盤、自民党の鷲尾英一郎(47)がぽつりと言った。「意味が分からないよ」 報道各社の情勢調査では米山がやや優勢との結果が目立っていた。「反応は本当にいい」。自身が得る感触とのずれが埋まらぬまま、敗れた。 衆院6期。とはいえ、旧民主党から無所属を経て2019年に自民に入った鷲尾にとって一からの選挙戦だった。 元々は旧2区が地盤で、4区の有権者の約7割には「新人」となる立場。自民の4区支部長となった2023年2月からポスター約4500枚を張り、後援会「越鷲(えっしゅう)会」を約70地域でつくった。選対は重厚だった。 しかし、ほころびが出た。公示4日前、小千谷市で開いた国政報告会は参加者が十数人の時もあった。大票田の長岡市は頼みの市議たちが直前まで市長選があり動けなかった。初めて選挙運動に関わるメンバーも多かった。 敗戦濃厚となった10月27日夜、県議の柄沢正三は静かに言った。「浸透し切れなかった。地域を歩き、足元を固めるしかない」 ◆泉田氏、無所属でも見せた影響力 自民公認を得られず無所属で戦った元知事の泉田裕彦(62)が4万3千票余りを獲得したことに、4区の自民関係者は衝撃を受けた。鷲尾に約1700票差まで迫った見附市の鷲尾選対幹部は「なぜこんなに票が出るんだ」とうめいた。 前回は旧5区で比例復活。今回は自民の元県議から裏金を要求されたとして刑事告発した過去を踏まえ、街頭で自民県連への批判を続けた。新潟日報社が加盟する共同通信社などの出口調査では自民と公明の支持層の2割弱を奪い、無党派の支持割合は鷲尾を上回った。 泉田は去就を明らかにしていない。自民県議の一人は「米山さんがいて泉田さんの影響力まで残ったら、それこそ4区の自民党は大変だ」と漏らした。