【ライブレポート】JUJU、デビュー20周年全国アリーナツアーを完走
■「皆さんからいただいたこの20年を胸に、私はこれからも歌い続けていきます」 JUJUの20周年全国アリーナツアー『JUJU 20th ANNIVERSARY ARENA TOUR 2024 「YOUR REQUEST」』が、デビュー記念日である8月25日に、さいたまスーパーアリーナにてファイナルを迎えた。 【画像】力強く歌い上げるJUJU 本ツアーは、オリジナル、カバー、ジャズなど、JUJUがこれまで歌い届けてきたすべての楽曲の中から、リクエスト(YOUR REQUEST)を募ったセットリストで構成された。20周年ならではの、まさに“BEST OF JUJU”なライブだ。 冒頭、これまでのミュージックビデオやジャケット写真で構成されたオープニング映像が流れる。JUJUが歩んできた20年が一気にフラッシュバックし、ファンの熱量も一気に高ぶる。 オープニング映像が終わると、会場を煽る派手な照明にあわせ、JUJUが堂々と登場。資生堂“マキアージュ”CMソングとして話題になったアップチューン「Hot Stuff」で一気に総立ちにさせる。 続く「STAYIN’ ALIVE」で会場の熱をさらに引き上げるJUJUのパフォーマンスは、冒頭2曲だけで「JUJUのライブはエンターテインメントなのだ」と実感させる華々しさがある。 「皆さんに連れてきていただいた20年、お祭りのように皆さんと1曲1曲振り返りながら、楽しい時間を過ごせればなと思います」と思いを伝えると、「ラストシーン」を歌唱。スリリングなストリングスと石成正人(Gu)の官能的なアルペジオ、そして会場を真っ赤に染める照明が、妖しげな雰囲気を生み出す。 続けて、代表曲のひとつである「この夜を止めてよ」へ。ままならない大人の物語を描いた曲をここまで心に響かせるシンガーは、JUJUしかいないだろう。 そして、石成(Gu)と本間将人(Sax)のセッションが始まると、またも空気は変わる。贅沢でデリシャスな、ジャズの時間だ。13年連続ジャズLIVEを開催するなど、ジャズをライフワークとしているJUJU。スタンダードナンバー「TAKE FIVE」では、総勢14名のミュージシャンの確かな演奏と、軽やかなJUJUのボーカルが混ざり合う。JUJUとミュージシャンの絆のようなものが伝わってくる名演だ。 続けて、草間信一のジャジーなピアノソロからはじまる「New York State of Mind」。言わずとしれたBilly Joelの名曲だが、シンガーを志し、単身18歳でニューヨークに渡ったJUJUが歌うと、なおさら胸に迫るものがある。鹿討 奏のトロンボーンソロもむせび泣き、ステージにはニューヨークの古いアパートの壁面が投影。そこに飾られたいくつかの写真は、ニューヨーク時代のJUJUの写真であることに気づいたファンもいたことだろう。ビジョンに映るJUJU自身による意訳もあいまって、ニューヨークの物語に没入させてくれる粋な演出となった。 ミュージシャン、コーラス、ダンサー紹介の間奏を挟んだあと、ステージには「Snack JuJu」の文字が。ムーディーなジャズパートから一転、「六本木心中」でスナックさながらの熱狂を生み出す。 中森明菜の名曲「飾りじゃないのよ 涙は」のあとは、スナックJUJU恒例のママのお悩み相談。ファンとの楽しいやり取りも、JUJUのライブが人気である所以だ。 お悩み相談後の「時の流れに身をまかせ」は、スナックJUJUのお客さんにとってはもはや定番。心の不安ともやもやを、そっと洗い流してくれる作用があるのだろう。 続くオリジナル曲メドレーでは、「What’s Love?」「37℃」「If」「sayonara」を披露。この4曲はすべて曲調もジャンルも違うが、どの曲も、情景や主人公の心情が自然と浮かんでくる。物語の語り部として歌を届けてきた、JUJUにしかできない表現力なのかもしれない。 2007年から毎年欠かさず、オリジナル、カバー、ジャズ、スナックと様々なスタイルの全国ライブツアーを開催してきたJUJU。そのなかでも特に思い入れが強い“ジュジュ苑”の人気コーナー「今月のユーミン」として、「海を見ていた午後」をセレクト。どこからか聴こえてくる波の音とストリングスの美しい響きは、真夏のさいたまに涼し気な心地よい風を吹かせ、会場全体に澄んだ空気を生み出す。そしてなにより、一つひとつの言葉を丁寧に歌い届けようとするJUJUの姿から、ユーミンへの真摯なリスペクトが伝わってくる。 「LA・LA・LA LOVE SONG」「奏 (かなで)」と、男性ボーカルの名曲を立て続けに歌唱したあとは、名曲「東京」へ。JUJUの曲でも屈指のバラードとして人気が根強いこの曲で、涙を流す観客も多かった。 キャリア初期の楽曲「ナツノハナ」を花火の映像とともに届けたあと、ピアノとストリングスによる印象的なイントロが流れる。映画『余命1ヶ月の花嫁』主題歌「明日がくるなら」だ。2009年の着うた大ヒットバラードだが、厚みのある演奏とアレンジで、2024年にも新鮮に響く。 そして、「今日8月25日に、JUJUと出会ってくださった皆さんと、私はさらに太い一線を超えたいです」というMCのあと、「一線」へ。エッジの効いたストリングス、ギターが際立つサウンドとJUJUの力強いボーカルで会場を総立ちにさせる。2024年リリースの最新曲だが、すでにJUJUとファンにとって大事な1曲になっていることを感じさせる盛り上がりを見せ、本編は終了した。 アンコールに入り、「やさしさで溢れるように」のイントロにあわせて再登場したJUJU。ステージの隅々まで歩いて手を振りながら、ファンに歌で感謝の想いを伝えているように見える。JUJUからのメッセージが書かれたウイングハートも降りそそぎ、感動的なシーンとなった。 「20年前にデビューしたときはとても臆病でした。それでも、皆さんがちょっとずつ出会ってくださったおかげで、今ではライブがいちばん好きになりました。奇跡を信じられるようになったのは、皆さんが教えてくださったからです。皆さんからいただいたこの20年を胸に、私はこれからも歌い続けていきます」と感謝を述べ、「奇跡を望むなら…」へ。この曲の主人公は、夜明けを待ちながら、奇跡を信じて進みつづけることを決意する。 デビュー後ヒットに恵まれず、背水の陣でリリースしたこのバラードは多くの人に愛されつづけ、JUJUというシンガーを象徴する曲となった。さいたまスーパーアリーナに集まった満員のファン一人ひとりに届くよう丁寧に歌い届け、JUJUの20周年全国アリーナツアーは幕を閉じた。 JUJUがこれまで歩んできた20年は、決して順風満帆だったとは言えない。それでも、奇跡を信じて実直に音楽と向き合い、心に残る曲を歌い続けてきた。20年を超えたこの先も、JUJUはきっと聴く人の人生に寄り添う物語を届けてゆくのだろう。 <セットリスト> -OPENING VTR- 1.Hot Stuff 2.STAYIN’ ALIVE 3.素直になれたら 4.ラストシーン 5.この夜を止めてよ 6.TAKE FIVE 7.New York State of Mind 8.Remember (The Good Times) 9.六本木心中 10.飾りじゃないのよ 涙は 11.時の流れに身をまかせ 12.シングル・アゲイン 13.Medley
THE FIRST TIMES編集部