メタンハイドレート、日本海側で本格掘削調査へ
「新たな国産エネルギー」として注目されるメタンハイドレートの日本海での調査が本格化します。独立行政法人産業技術総合研究所(産総研)と明治大学ガスハイドレート研究所は15日、経済産業省の委託事業として、鳥取県の境港から調査船を出航。約2カ月間にわたり日本海の資源量を把握する調査に乗り出し、初めて海底下100メートル近くでの掘削調査も行う予定です。 ■太平洋側に比べ出遅れ、ポテンシャルは大 メタンハイドレートはメタンと水が低温、高圧状態で結晶化した物質。日本では1980年代から主に太平洋側で調査研究が進められ、昨年3月には愛知県と三重県の沖合で世界初のガス生産実験に成功しました。資源量は日本が輸入する液化天然ガス(LNG)の10年分以上あるとされ、安定生産とコスト削減の技術開発が探られています。
一方、日本海側の状態は最近までよく分かっていませんでした。明治大学ガスハイドレート研究所によれば、2003年に新潟・上越沖で石油天然ガス探査の調査中に偶然、メタンハイドレートが発見され、04年から東京大学の松本良教授(現在は同研究所特任教授)らのチームによって集中的な調査が始まりました。 その結果、日本海側ではメタンハイドレートが海底下から「煙突状」にわき上がって海底表面まで露出していることを確認。数百メートルの深い砂層に広がる「深層型」の太平洋側に対し、日本海側は「表層型メタンハイドレート」として相次いで確認されるようになりました。回収方法も水深1000メートルの海底をさらに数百メートル掘り下げ、減圧する太平洋側に比べ、海底表面でそのまま採取できる日本海側は、資源としてのポテンシャルが高いのではないかとも見られています。
ところが、国はすでに始まっていた太平洋側の調査研究を優先、日本海側の研究者から不満の声が上がっていました。民間で独自調査を進めてきた独立総合研究所の青山繁晴さん、千春さん夫妻は著書などで「日本海側にはほとんど予算がつかない」「官僚や学者が既得権益を守っている」などと訴えています。 ■国もようやく本腰、まず資源量把握 こうした流れを変える動きと「3・11」後のエネルギー危機を追い風に、12年9月には秋田、山形、新潟、富山、石川、福井、京都、兵庫、鳥取、島根の日本海沿岸10府県による「海洋エネルギー資源開発促進日本海連合」が発足。国への働きかけが強まり、ようやく昨年度、日本海側の調査予算約10億円が認められ、3年計画での資源量把握調査が始まりました。