iDeCo7月の新規加入者3.48万人、新規加入者数は4カ月連続で前年同月比マイナス幅を拡大
今年から始まった新NISAは、1人当たりの非課税限度額が1800万円まで拡大され、かつ、非課税期間が無期限になったことで、長期にわたってまとまった資金を作る制度として、従来のNISAやつみたてNISAよりも、ずっと使いやすい制度になった。ただ、新NISAの利用者も含めて、資産形成をしていこうと考える人の共通して持っているニーズは、「人生100年時代、長くなった老後生活でお金に困る生活をしたくない」という老後への備えだろう。その点では、いつでも解約・現金化が可能なNISAと比べて原則として60歳までは換金できないiDeCoは、「老後のための口座」と明確に位置づけられている。
新NISAは新社会人をはじめとした若い世代が、「将来のために」と積立投資をする口座であり、そこで作られた資金は、転職のためのスキルアップや結婚費用、あるいは、住宅購入の頭金、子供の教育資金など、様々な用途に活用することができる。これに対してiDeCoは、60歳になるまで使うことができない資金になる。定年が65歳に延長される動きがあるが、その前に「役職定年」のような処遇変更があり、60歳以降は給与収入が減額されるケースがある。また、健康面にも不安が感じられるようになり、70歳まで現役で働きたいと思っていても、実際にフルタイムで働ける人はそれほど多くはなく、また、健康に恵まれて70歳までフルタイムで働ける人でも、その収入の水準は50歳代までの収入には遠く及ばないものになるだろう。60歳代になってiDeCoに数百万円の資金があれば、どれだけ心強く感じられるだろうか。
このように生涯必要となる資金を考えると、20代~40代は、まずNISAで資産形成をはじめ、子供が18歳(大学進学時)になる教育費のピークを越えてから、「老後のために」という目的でiDeCoに取り組み始めるというのが自然の流れであるようだ。末子を30歳でもうけた人は、iDeCoに取り組むのは50歳を目前にしているようなタイミングになる。実際に50歳になって、「iDeCoで老後資金を」と考えても、現在の限度額(企業年金のない会社員は毎月2.3万円)では作れる老後資産に限界がある。限度額の改正がなければ、NISAとの併用になろう。子供の教育費や住宅の頭金などを使った場合はNISAの非課税限度額は、十分な空きがある状態にもなっているだろう。このようなライフステージをイメージしたiDeCoの活用の仕方が広がることが望ましい。新NISAのスタートによってiDeCo人気は一時的に下火になっているものの、「老後不安」がある限り、iDeCoの活用は根強く続くと考えられる。(グラフは、iDeCo新規加入者数の推移)
ウエルスアドバイザー