【ひねもすのたりワゴン生活】滋賀から城崎、そして神戸 5日間1500㎞のクルマ旅 その6
2軒目ということもあって、腹は限界に近くなっていた。しかし、気になる品がもうひとつあって、それを〆にしようと心に決めていた。それは卵焼きだった。カステラみたいなんですよ…と板前が勧めてくれたのだが、その材料を聞いて、また好奇心が頭をもたげたのである。なんと琵琶湖のスジエビとホンモロコをすり身にして卵液に混ぜ、焼き上げるのだという。シバエビや海の白身魚なら聞いたことがあるけれど、淡水の魚介で焼き上げるなんて、またまた初耳。…とはいえ、ここまでの流れで、琵琶湖の幸を見事に昇華させるこの店の情熱と技術に感服していたので、ぜひ味わってみたいと思ったのだった。 カステラとはうまいことを言うなぁ…ひと口食べてそう思った。食感やきめの細やかさ、そして柔らかな弾力は、まさに高級カステラ。品のいい旨みが舌に広がっていくが、それがスジエビとホンモロコだとしたら、琵琶湖産魚介の奥深さと素材としての潜在能力に平伏すしかない。
…と、ここまで琵琶湖の幸を中心に楽しんできたけれど、マグロやタイなど本来の寿司種のラインナップにも唸らされた。品書きに記される産地と時期を合わせれば、大将の食材への想いと深い探求心がひしひしと伝わってくる。この店を紹介してくれた友人もそれを楽しみに大阪から通っているらしい。琵琶湖に寿司を食べに行く…なんて考えたこともなかったけれど、こんな店と出会ってしまったのだから改めなければならない。そして、再訪必至である。
それにしても、近江八幡の夜も刺激が強過ぎた。そして、ここも一泊では足りるはずがない。湖東おそるべし…その魅力は底なしなのである。
【筆者の紹介】 三浦 修 BXやXMのワゴンを乗り継いで、現在はEクラスのワゴンをパートナーに、晴耕雨読なぐうたら生活。月刊誌編集長を経て、編集執筆や企画で糊口をしのぐ典型的活字中毒者。 【ひねもすのたりワゴン生活】 旅、キャンプ、釣り、果樹園…相棒のステーションワゴンとのんびり暮らすあれやこれやを綴ったエッセイ。
三浦 修