巨人ではなくDeNA復帰・筒香嘉智は「野球界の未来を憂う若き指導者」…活動を追う記者が伝えたい素顔「5年間の米国生活はムダではない」
「勝利至上主義」に疑問を抱いたドミニカでの日々
筒香が「勝利至上主義」に疑問を抱いたのは、2015年オフに、ドミニカ共和国のウィンターリーグに参加したのがきっかけだ。筒香をドミニカ共和国に案内したのは堺ビッグボーイズ代表の瀬野竜之介氏と、当時、JICA職員でのちに堺ビッグボーイズのコーチになる阪長友仁氏だった。 「ドミニカ共和国の人口は、日本の12分の1ですが、メジャーリーガーは140人くらい出ている。日本は昨年10人にも満たなかった。これはどういうことなんでしょうか? ドミニカ共和国では指導者は何も言わずに子供たちを見守っています。そんな中で、小学生の子供たちがジャンピングスローやグラブトスを当たり前のようにやっています。指導者はそうしたプレーでミスをしても何も言いません。だから子供たちは失敗を恐れず、何回も失敗しながら新しいことにチャレンジしていきます。僕は、子供たちが何の躊躇もなくチャレンジしている姿を初めて見ました。 バッティングもとにかくフルスイングです。 ドミニカ共和国には16歳から入ることができるMLBアカデミーを30球団が設置しています。これも見学しましたが、ここでも変化球を投げる子はいませんでした。ほとんどがストレートをど真ん中に投げ込む。バッターはそれをフルスイングする。というのが基本です。 こういうドミニカ共和国の小学生と、日本の小学生が今の時点で対戦すれば、日本のほうが大きく勝ち越すと思います。日本では小学生から変化球を投げますし、細かいプレーも身につけますから。でも、それが大人になったときには、すっかり逆転して、凄い差になっています。 もちろん日本がすべて悪いのではありません。日本にもいいところはたくさんあります。でも遅れている部分があるのも事実です。内向きになるのではなく、海外に目を向けてそこからいろいろ吸収するのも大事ではないでしょうか」
「トーナメント制の弊害」にも言及していた
2019年1月には筒香は日本外国特派員協会で記者会見を行った。ここでは「トーナメント制の問題」に言及した。 「やはりトーナメント制について、大きな弊害がすごく出ていると思います。プロ野球選手、プロ野球の体ができた大人ですらリーグ戦でやっています。それが体のできていない小さい子供たちがトーナメントをしています。皆さん、良かれと思ってのことですが、今は全国で大会数がかなりの数、増えています。トーナメント制でやると試合に勝つにつれて試合数もかなり増えてきて、日程的にも休みがない状態になります。メンバーは固まってしまい、勝つために試合に出られない子供たちもいるし、野球が楽しくないという子供たちもいます」 筒香は、子どもたちの肩ひじの健康状態についてもこう話している。 「連投連投による投手の肘、肩の故障が小中学生でかなり増えています。慶友整形外科病院の古島弘三先生のお話によると、侍ジャパンU12代表の15人のうち10人が肘を怪我している、内側障害があるというデータが出ています」 筆者はこの時期、金属バットについて筒香に話を聞いた。 「木製バットは『飛ばない』ということですね。金属バットの場合『芯』を外れても本当に飛んでいきます。高校時代はそれが当たり前だったのですが、プロ入りして木製バットで打って『バットの芯で打たないと飛ばない』ということを痛感しました。 金属バットは金属の筒に充填物を入れてできています。単純なつくりなので、木製バットと異なりどんなに研究しても『バットの構造、機能』をよく知ることができません。だから金属バットを使い続けていたら、技術の向上にもかなり遅れが出ると思います。 金属バットでは、芯を外しても内野の間を速い打球が抜けていって安打になっていましたが、木製の場合、芯を外れるといい打球は飛ばない。金属バットを使い続けた選手には、それが大きな問題になるのかなと思います」
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