虎のソナタ 大雨の安芸で一番泥だらけになった男 虎戦士でも、駆けつけたファンでもなく…
嗚呼、高知は雨だった…。11月が始まって、阪神の秋季キャンプがスタートした。天気予報で何となくは分かっていたけれど、高知・安芸では午前中から傘の花が開いた。 早出特守、練習開始前の歓迎セレモニーは何とかメイングラウンドで行えたが、その後は室内でのメニューに切り替えられた。平日にもかかわらず、タイガース球場に駆け付けたファンのため息が聞こえてくるようだ。安芸ドームに入ることはできない。かといって、スタンドに陣取っていても、メイングラウンドはもぬけの殻。神整備でおなじみの阪神園芸の妙技もこの日は見られなかった。 「ブルペンを上からのぞいているファンもいたけど、ほとんどが残念そうに帰っていったわ」 還暦トラ番、三木建次のリポートだ。安芸でのキャンプ経験が豊富なベテランも「初日から雨なのは記憶がないなあ。昨年も何日かは降ったけど、一日中というのはなかったはずや。今はザーザー降りやしな。天気はどうしようもないけど」と首をすくめた。 そう、仕方がない。高知県は2010年以降、都道府県別の年間降水量で4度も全国1位になっている多雨な地域なのだから。 あいにくの天気で、ファンからは厳しくも温かい声援も少なかったが、選手たちはハッスルハッスル。藤川新監督がキャンプのテーマに掲げた「没頭」を体現するような初日だった。その中で、なぜか誰よりも泥だらけだったのが、トラ番キャップの新里公章だ。 藤川虎が迎えた一つの節目。何とか屋外でのびのびと練習ができるように、番記者魂を発揮してグラウンドの水抜きをやったのか!? もちろん、そんなことはない。 「藤川監督を追って安芸ドームからブルペンに向かうとき、グチャグチャの土の部分で滑って尻もちをついてしまいました。ズボンはビショビショです…。伊藤将には『めっちゃ汚れてる』と言われ、粟井球団社長には苦笑いされました」 ──ぬれた坂道だったの? 「いや、平らなところです」