サバ不漁で八戸市や石巻市が悲鳴 黒潮異変の裏に温暖化
サバは海水温が20度を超えるとエサを食べなくなる性質を持つという。例年、冬のシーズンに低くなった海水温とともにサバが南下してくることで、八戸沖や石巻沖などを豊かな漁場にしてきた。だが黒潮続流が変化したことで、海水温が下がりにくくなり、サバの南下時期が遅れたり、漁期が短くなったりしているのだ。 こうした状況は「1年以上継続しており、少なくとも過去50~60年は観測されてこなかった」と由上氏は打ち明ける。海水温が下がりにくくなっている要因について由上氏は「温暖化が影響しているのではないかとの見方が広がりつ つある」と語る。 黒潮続流の正常化がいつになるのか。サバの回遊経路がどのように変化し、新たな漁場はどこなのか。その点がすぐに解明できるかは不透明だ。その間、指をくわえて待っていては、サバ事業を営む事業者の経営体力がむしばまれてしまうリスクをはらむ。 対策に動く企業も現れた。 水産大手のマルハニチロでは国内のサバ不漁を受け、「ノルウェー産サバ煮付・みそ煮の販売を促進している」(担当者)と打ち明ける。国内産サバを使った商品価格の値上げや一時的な販売休止を余儀なくされる中、同社はイワシやサンマなど、他魚種の缶詰商品の販促にも力を入れている。 冒頭の八戸前沖さばブランド推進協議会の担当者も、「八戸は昔からサバの水揚げを行っており、加工業者も高い技術を持っている。必ずしも原産地にこだわらず、八戸に来ればおいしいサバが食べられるという点を発信していきたい」と話す。イベントにおける即売会の実施や、東京・大阪にあるPRショップなどとも連携し、ブランド維持に引き続き力を注ぐ構えだ。 サバ以外にもイカやサンマなど不漁にあえぐ魚種は少なくない。極端気象に伴う影響をつぶさに捉え、事業上のリスクをいかに抑えられるか。あらゆる企業に極端気象下での事業戦略再考を投げかけている。
生田 弦己