大阪市の橋下市長退任記者会見【全文5】
大阪市の橋下徹市長は18日、任期満了に伴い大阪市役所で退任会見を開いた。橋下市長は冒頭から「メディアへの注文したい」と話し、同市の文化予算に関する報道について言及し「検証能力がない」などと批判からスタート。また、これまでやってきたことに対しては「やるべきことはやった」「反発を食らうことはやり尽くした」などと述べた。
民主主義で絶対に必要なのはメディア
朝日新聞:朝日新聞のです。有権者へのメッセージの扱いどのように工夫されたのか、ぶら下がりはさっきもありましたが、演説でパネル使われたりして、ネットとかで中継を入れられたとか、今までの政治家の方と違うような形になったと思うんですけど。 橋下:だからここは繰り返し言ってますけども、民主主義で絶対に必要なのはメディアなんです。それは、まずは権力チェック。日本社会のやっぱりこのメディアの、日本のメディアの力っていうのはものすごい力あると思うんですね。で、やっぱりそれこそ首相をひっくり返すこともできるし、僕ぐらいの政党代表なんかは簡単にクビにする、代えることだってできるっていうのは日本のメディアの力だし。これは、僕は今度、この立場を離れて一国民なったときには、そのメディアの力っていうのは非常に頼りになる力だと思ってます。そういう意味で権力チェックと。 もう1つ、やっぱり僕はずっと訴え続けてきたのは、例えば有権者の代表、有権者とのつなぎ役というかね、情報が、やっぱりつなぎ役っていうのは、僕はメディアのもう1つの役割だと思ってるんで。僕は読売新聞をはじめほかの新聞社にもずっと言ってたね、世論調査をやって大阪都構想をするとき説明不足だっていう、あの回答は、あれは僕の責任でもあるけどメディアの責任でもあると僕は思ってるんです。それ、説明するのはメディアの責任じゃないかって。 500人や600人ぐらいの村だったら政治家も個別に説明できるけど、260万人の市民に、200万人の有権者に、1人1人に説明できるわけないんですから。それでもやりましたよ、やれるところまで。39回の住民説明会、あれだって1日3回、1回2時間のやつを13日間ぶっ続けでやっても、トータルで3万5,000人、4万人ぐらいですよ、直接語ることができるのは。そういう意味でやっぱり有権者と政治をつなぐのがメディアだから、いかにそういうところを、メディアを通じて有権者にそのメッセージを届けるかっていうのは、やっぱりそこを考えるのが大事だと思いますよ。もう一番重要なことだと思います。 で、例えば知事になったときも、組合調書なんかは全部オープンにしなかったわけですよ。でも全部見てもらおうと、とにかく見てもらおう。あとは編集の自由があるから、どう報じられるのか、もうそれは自由だけど。で、変な報じ方したら、また僕は言論の自由って言えばいいんですね。だからそれは全部フル・オープンでやっていこうということを徹底して心掛けてきたつもりですけども。だからぶら下がりでも1日2回受けるし、質問がなくなるまで受けるし、記者会見も基本的には誰が来てもいいっていうか、皆さんの同意があれば誰でも来ていいってことにしてました。とにかく、質問がなくなるまではとにかく答え続けようと。でもやっぱりフル・オープンなんで、フル・オープンともう基本、してますし。 そしたら今日も取材に来てますけども、ある雑誌かなんかのジャーナリストがね、橋下はテレビを重視していて雑誌、紙メディアを重視してないって言うんですよ。とんでもないですよ。もうこれはメディアのおごりだと思うんですけど、なんで僕が記者から申し入れがあったら、その記者の取材に全部個別に応じなきゃいけないんですか。これは、はっきり言うと力のある、有権者にメッセージを届けるわけですから、言ったら力のあるメディアに対して応じないと意味ないじゃないですか。 そんなもん、どっかのフリーのジャーナリストかなんか知りませんけど、そんなちょこちょこっと書いた雑誌が、誰に読まれてるか分かんないようなね、そんな記事しか書けないような人の取材に1時間も2時間も取られるぐらいだったら、そこはきちっと紙媒体であっても、申し訳ないけどもやっぱり全員に応じるわけにはいけないから、5大紙だったりなんだったりで、そういうところに関してはきちんと応じてきたつもりだし。記者会見では、個別には取材には応じられなくても、記者会見に来て質問してくださいよとかいうことは、僕はもう常に言ってきたつもりです。 やっぱりそれはメディアだから、記者だからといって、市長や知事に申し込めば必ず取材に応じてもらえるなんて、それはちょっとおごりすぎだと思いますけどね。それはやっぱり朝日新聞の取材に応じるのも、フリーのジャーナリストの取材に応じるのも全然違うわけですから。それは、見解が合わないことがあったりと、それはいろいろあるかも分からないけど、有権者に伝える力としては、それは朝日や毎日や読売や日経、産経だって、そういうところにきちっと応じていく。それは個別のジャーナリストの取材に1個1個全部応じてなんてのは、そんな僕、暇じゃないのでね。 ただ基本的には、やっぱりきちっと有権者に伝えてくれる、それだけの力のあるメディアにはできる限り対応してきたつもりなんですけどもね。ただそこに限らず、この記者会見だとかぶら下がりの場はいつでも取材に来てもらってもいいですよって言ってるのにね。その勘違いしたそういう記者とかは、個別取材に応じてくれないからってぶつぶつ文句垂れて。そんな記者の個別取材に応じてもなんの影響力もないのに、それだったらテレビの前できちんとやりましょうよと。 しかもその記者っていう者が、大阪府政は、財政の問題についてなんにも知識がなくて、うそ八百のことを書いてるような記者だからね。それだったらみんなテレビとか、みんなフル・オープンでやりましょうよって言ったのに、それに応じないからといって記者を、紙媒体を軽視してるなんて言ってる記者がいますけど、とんでもありません。僕は紙媒体だろうが、テレビメディアだろうが、やっぱりみなさん有権者の代表だというふうに僕は思ってるんで。ただそれだけ有権者にきちっと伝えられるだけの力のない、そういう記者は、それは記者って肩書きが付いてても、260万人の市民一人ひとりと同じ扱いで、一人ひとりに対して取材なんか応じてられませんよ。 というようなことで、やっぱり僕はメディアを通じてきちっとメッセージを送るという、もうそれしか政治家としてやりようないですからね。あとは地道に普通の政治活動として街頭演説だったり、タウン・ミーティングだったり、これは僕は今までの政治家にないぐらいの回数を僕はやってきた、そういう自信があります。パネルを使って、あんな2時間も街頭演説、しかも雪の降る真冬の寒い中に、パネル使って2時間も街頭演説やってる政治家なんてあまりいないんじゃないですかね。 朝日新聞:フリーの方はフリーの方で役割があるところもあるので。首長と。 橋下:そんなとこで肩持たないで。 朝日新聞:いや、本当に思ってます。 橋下:でも、いや、役割があったとしても、トップが全部応じられますかってことです。そんなの、市役所の仕事をトップ・マネジメントは、どんなフリーの記者がどっかの大企業の社長のとこに行って、ふらっと行って、取材応じてください、応じてくれなかったら、なんだこんな軽視してなんて、そんなことあり得ないじゃないですか。 朝日新聞:最後にします。政治家、首長はよく権力の甘い蜜があって辞められないということをおっしゃられる方もおられるんですが。 橋下:甘い蜜なんかあるんだったら教えてください、もう。 朝日新聞:8年間味わえたとして。 橋下:なかなか面白い質問ですね。いや、味はない、まあでも、じゃあ、やってしんどいことばっかりで、家族も犠牲にしてしんどいことばっかり、そんならなんのためにやってんだってことになると思いますけどね。でも自分の思いをやっぱり実行できるっていうのは、それは甘いとかなんとかってことじゃないけども、でも、そこに38歳から46歳までのこの期間、自分の人生の中のある意味一番エネルギーある時期ですよね。 これをある意味、そこの38歳から46歳までの自分にとって、一番エネルギーがあって、もう今はだいぶ疲れちゃいましたけど、それでも一番エネルギーがあるときに、本当に全力を投球するには、やりがいのある、そういう仕事だったなというふうには思いますけどね。でも、別にコメンテーターとかそれを、さっきの、いい加減なコメンテーターは批判しますけど、それはそれで一定の役割ありますからね。権力チェックとか、意見を言うってのも一定の役割はあると思う。 でも言うだけじゃなくて、やっぱりそれが実行できるっていのが、本当にそういう投じるだけの価値がある仕事だなというのはありましたね。 朝日新聞:ありがとうございました。