メディカルクリエーションふくしま20周年/医療機器の最前線(2) 極細の内視鏡製造 住田光学ガラス 需要に応じ開発
豊かな自然が広がる南会津町。住田光学ガラス田島工場は光学ガラスの製造技術を生かし、医療用内視鏡の分野で業界をリードする。素材メーカーとしての強みとノウハウを生かし、最先端の治療に求められる技術開発に挑む。 昨年、創業100年を迎えた。1970(昭和45)年、田島工場を稼働し、ガラス原料を溶かし、繊維状に引き伸ばす光ファイバーや様々な形状の光学レンズを製造してきた。医療分野への進出は2010(平成22)年。ファイバースコープ用の機器を製造していた。高い技術力を見込んだ県関係者から打診を受けた。 医療機器設計開発・製造に関する展示会「メディカルクリエーションふくしま」に医療用内視鏡の試作品を出展した。患者への負担が少ない「低侵襲治療」という言葉が知られ始め、極細の内視鏡は関係者から驚きを持って受け止められた。 2015年、県の補助金を得て敷地内に医療機器製造工場を新設。内視鏡の生産を本格化させた。光ファイバーの1本ごとの太さをそろえて束ねる細やかな技術は追随を許さない。医療現場に求められる鮮明な画像を得られるよう工夫を重ねた。レンズ加工の技術を生かし、外径0・35ミリの極小の非球面レンズを開発した。内視鏡に取り込むことで、需要を掘り起こした。 2017年に開発した血管内視鏡は外径0・49ミリで、解像度は従来の約2倍の1万画素まで向上させた。脂肪の有無や色の違いなど、血管内の詳細な状態の見極めが可能になり、医療現場に広く普及していった。 内視鏡を使った治療では照射する光の強弱により、十分な明るさを得られない箇所が残る課題があった。2022(令和4)年、光を放つ角度の異なる複数の光ファイバーを組み合わせる技術を開発し、照射箇所を手前から奥までくまなく照らす仕組みを実現した。医療分野に進出して約15年間で試行錯誤を繰り返し、6種類の医療機器の量産化を成し遂げた。 国際的な医療現場からも熱い視線が注がれる。国際機関によるがんの調査によると、肺がんは発症率が最も高く、死亡率も高い。肺の先端にある肺胞の大きさはわずか0・1ミリ。同社は肺の深部にある肺胞まで到達し、診断や治療に活用できる内視鏡の開発を検討している。常務兼工場長の星菊喜(64)は「命と向き合う医療現場の真剣な思いに技術力で応えたい」と先を見据える。(文中敬称略)
■第20回医療機器設計・製造展示会「メディカルクリエーションふくしま2024」 県やふくしま医療機器開発支援センター、福島民報社などでつくる実行委員会の主催。27、28の両日、郡山市のビッグパレットふくしまで開く。県内外から255の企業・団体が出展する国内最大級の展示会で、医療や介護に関する最先端の技術を紹介する。ものづくり企業や医療機器メーカー、医療関係の参加希望者は公式サイトで事前登録する。時間は午前10時から午後5時(最終日は午後4時)まで。