“終の住処”選ぶべきは持ち家or賃貸?何歳から探すべき? 家を借りられない高齢者、貸す側が渋る切実な事情
太田垣氏自身が関わった例として、「93歳と89歳の夫婦が、福祉の手から漏れていた」ケースがあったそうだ。「介護サービスなどの制度を本人たちが知らなかった。昔は民生委員が訪問していたが、今は行政もシャドーワークで大変。これから高齢者の一人暮らしが増えたとき、とても行政だけでは手が回らない」と危惧する。
■賃貸or持ち家、都市部or地方 “終の住処”の選び方は
フリーライターで編集者の元沢賀南子氏(58)は、「アラ還暦・シングル・子なし・フリーランス(低収入)」の属性で、老後に住宅難民にならないため、早めに“終の住処”を見つけようとしている。賃貸か購入、都市部か地方、シェアハウスかアドレスホッパーなど、様々な可能性を模索。物件チェックは、去年だけで1000件を超えた。 住宅探しの経験から、元沢氏は「賃貸が得だ」と勧める。「買うと固定資産税がかかる。近隣のリスクもあったら手放すのは大変だが、賃貸だったら逃げられる。お金に余裕があるなら、賃貸に住んで蓄えておき、誰も貸してくれないとなった時に、ようやく買うくらいの気持ちがいいのでは」。 かつては持ち家を持っていたこともあるという。「20代でマンションを買ったが、2回も泥棒に入られて、3年後に売った。侵入経路が共用部分だったため、管理組合全体で対策を考える必要があったが、話し合いにならなかった」。その経験から「一戸建てしかないと思ったが、東京では手が出ず、ずっと賃貸族だった経緯がある」と明かした。
太田垣氏は「地方が借地借家法で、賃借人保護に偏っている」と語る。「家賃未払いでも、賃借人が高齢だと、裁判官は『家を奪うことは重い』として判決を出し渋る」。また、「高齢者は動くタイミングが遅すぎる。現役の時には家賃を払えていたが、年金暮らしでは払えないとわかっても、収入に合った安いところに引っ越さない」と触れる。 高齢者が選ぶのは「安い家賃帯が多く、そういう物件は古い」傾向にある。「建て替えとなると、退去しなければならない。50代から収入と築年数を比べて、自分が死ぬか、建物が古くなるか、どちらが先かを考えて、60代で引っ越す。70、80代になって、『東京は高いから地方へ』と行っても馴染めない。高齢者に住みやすい物件を探すこと、金銭面や築年数も考慮して、『最後まで住もうと思ったら住める物件』に引っ越すのがいい」との見方を示した。
経済学者で慶應義塾大学名誉教授の竹中平蔵氏は、「住宅だけでなく、介護全体の中で議論しないと、問題は解決しない」と指摘。「要介護者が間違いなく増える中で、介護施設を徹底して地方に作ること。財政負担は中央政府が補助する。私のところにも、大手老人ホームから『介護まで全部みとる』というダイレクトメールが届くが、豪華マンションを買うくらいの高額だ。お金で解決できる人にはいいが、そうでない場合には、地方に介護システムを作るしかない」と提案した。(『ABEMA Prime』より)